クエーサーが浮かび上がらせる、未知の銀河

【2007年9月20日 ESO

クエーサーは単独なら宇宙でもっとも明るい部類に入る天体で、ひじょうに遠方にあっても見つけることができる。このクエーサーを目印にして、暗くて見つけにくい銀河を発見する手法が確立された。


(今回見つかった銀河の一覧)

今回見つかった14個の銀河。黒い等高線はクエーサーの位置を示す。矢印は、各銀河の位置でおよそ2.6万光年の大きさに相当する。クリックで拡大(提供:ESO)

(銀河を発見する手法の概念図)

銀河を発見する手法の概念図。クエーサーの明るい光が、銀河を透かすことで銀河の存在が明らかになる。そして付近を詳しく調べることで、右上のように暗くて隠れていた銀河が見えてくる。クリックで拡大(提供:ESO)

クエーサーはほぼすべて数十億光年という超遠方で見つかるので、われわれとの間に銀河が横たわっている確率は低くない。その銀河が通常の観測手段では検出できないほど暗かったとしても、その中をクエーサーの光が通過することで存在を確認できる。ガラスについた指紋が、明かりにかざすとよく見えるのと同じ原理だ。

このように、銀河にさえぎられて少しだけ暗く見えるクエーサーの存在は、以前から知られていた。独・豪などの研究チームはこれをさらに推し進め、クエーサーの光から実際に銀河を発見し、さらには銀河の性質も調べることに成功した。

研究チームは、カタログに記載された膨大な数のクエーサーから、特定の波長で暗くなっているものを選び出し、その周辺を観測した。この観測により、われわれから約77億光年の距離、時代でいえば宇宙の年齢が現在の半分弱だったころの銀河を発見できると考えていた。

この手法の難点は、クエーサーが見つけたい銀河に比べて明るすぎるので、銀河の光を実際に見分けるのが困難だということにある。研究チームはヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTに赤外線分光計SINFONIを搭載し、わずかな波長の違いも反映したシャープな画像を得ることに成功した。そして、選ばれた20個のクエーサーのうち14個から銀河の光を検出したのだ。

研究チームを率いた独マックス・プランク研究所のNicolas Bouché氏は発見の意義をこう語る。「(70パーセントという)高い検出率も興奮するほどの結果ですが、その上、これら(見つかった銀河)はただの銀河ではないのです。新しい恒星を活発に形成しているので『スターバースト銀河』と呼ばれる、とくに注目に値するタイプなのです」

今後、研究チームは発見された銀河の内部運動を測定し、より詳しい性質を調べたいとしている。

クエーサー

ひじょうに遠方にあって通常の銀河数十個分のエネルギーを放出していると考えられている「クエーサー」と呼ばれる天体がある。観測されているクエーサーはもっとも近くても8億光年かなたにある。正体は今もって謎だが、大質量ブラックホールをエネルギー源としているとする説が有力だ。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.92 クエーサーって何? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])

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