減光が始まったかんむり座R

【2007年7月17日 アストロアーツ】

明るくなって話題になる星は多いが、「かんむり座R」は急激に暗くなることで知られている。そのかんむり座Rが、4年ぶりに減光を始めた。滋賀県ダイニックアストロパーク天究館の高橋進さんから解説をお寄せいただいた。


(R CrBの光度曲線)

R CrBの光度曲線(横軸に時間、縦軸に等級をとったグラフ)(提供:高橋進氏、VSOLJメーリングリストのデータより作成)

(2003年のR CrBの光度曲線)

前回減光した2003年のR CrBの光度曲線(提供:高橋進氏)

かんむり座R型変光星の代表星であるかんむり座R(R CrB)が、2003年2月以来となる4年ぶりの減光を始めたもようです。ちょうど観測には絶好期でもあり、減光していくかんむり座Rの様子をぜひ多くの皆さんで観測していただきたいと思います。

かんむり座R型変光星とは巨星段階を過ぎて徐々に白色矮星に近づきつつある星です。スペクトル観測によると恒星大気には水素が少なく炭素が多い、「炭素星」と呼ばれる星です。進化の進んだ星ですので、恒星表面からは質量放出で多量の物質が流れ出していると思われます。炭素を多量に含んだガスが恒星外部に吹き出され、これが恒星半径の20倍くらいまで離れると、炭素のガスは冷えて凝固し、細かいチリの雲となって恒星の光を覆い隠します。これがかんむり座R型変光星の減光の原因と見られています。しかしこの雲は恒星の放射圧によって吹き飛ばされていき、明るさはやがて元に戻っていきます。炭素雲の凝固はわりと急速に起きるために減光の始まりでは急激に暗くなっていきますが、放射圧による拡散はゆっくりと進むため、復光はゆっくりとしています。

かんむり座Rの平常光度はおよそ6等ほどですが、7月6日から7日に観測された秋田県の高橋あつ子さん、同じく秋田県の中谷仁さんから「6.3等で少し暗い」との報告がされました。それに続いて何人もの観測者の皆さんからも減光を確認する報告が寄せられ、減光は間違いないものとなりました。普段の等級よりほんの少し暗くなったのを見逃さなかった熱心な観測者の皆さんの普段からの努力のたまものと言えるでしょう。

6月末から7月初めにかけて天候が優れなかったために観測が途切れているのが残念ですが、減光はまさに6月末から始まったようで、7月になり日に0.1等ほどのスピードで暗くなっており、この原稿を書いている7月15日現在ではおよそ6.9等になっています。前回の2003年2月の減光の時は、このあと日に0.3〜0.4等という急スピードで暗くなっていき、減光開始から3週間ほどで13等にまで暗くなりました。今回もこのあとどのような減光が見られるかたいへんに興味深いところです。

時期的にもちょうど観測しやすいチャンスでもあります。ぜひ多くの皆さんに観測をお願いします。観測用の変光星図を見ていただいて0.1等の単位で目測してみてください。報告は日本変光星観測者連盟(VSOLJ)観測報告受付の広沢憲治さん(NCB00451@nifty.ne.jp)または高橋(HHF00200@nifty.ne.jp)宛に、観測時刻と観測者名を付けて送っていただければ、VSOLJデータベースとして世界の観測者に貴重なデータとして活用されます。ぜひこの機会に変光星観測にチャレンジしていただきたいと思います。


「かんむり座R」の位置

  • 変光星図。周辺の恒星に添えられた数字は等級の10倍(例えば「47」は「4.7等」を表す)(提供:高橋進氏)

この天体は天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.8」で表示して位置を確認できます。

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