環境啓発活動を推進する公開天文台

【2007年5月8日 アストロアーツ】

地球環境を考えるときこそ、天文学が必要だ。滋賀県にある公開天文台・ダイニックアストロパーク天究館はこの考えに立って、光害にとどまらない環境問題全般について社会にメッセージを発信している。その取り組みについてダイニックアストロパーク天究館の高橋進さんに解説をお寄せいただいた。


(広報たが5月号)

広報たが5月号(提供:高橋 進さん)

ダイニックアストロパーク天究館では、以前より大気環境への啓発活動を行なっており、一昨年(2005年)には環境省より大気保全功労者表彰を受賞しています。こうした活動をさらに行政(多賀町)と連携して進めていこうと昨年より「環境のための星空かんさつ会」の開催なども行ってきました。こうした大気環境をテーマとした活動をさらに広め、環境全般を対象とした啓蒙活動として今年度より町の広報誌「広報たが」の環境生活課の誌面を使い、宇宙の目から見た環境問題を連載していくことになりました。これまで天文サイドからの環境問題というと光害によって星空が見えにくくなっているという問題提起が主でしたが、今回の取り組みでは宇宙という視点から地球環境のすばらしさを考えると共に、地球という星を客観的に見ていき、より多くの皆さんと宇宙と環境を考える契機となればと期待しています。

また、こうした取り組みによりこれからの天文学の大きな役割も明らかにしていけるかと思われます。天文学の役割というと人類普遍の問いかけである宇宙の姿と宇宙の過去・現在・未来を明らかにしていくこと、現代物理の考証、宇宙開発支援など様々なことがこれまでにもあげられてきました。しかしそれらに劣らず重要なこととして、地球という星を客観的に見つめなおし環境に関わる科学や環境教育に貢献していくことがあります。住んでいるととてつもなく大きく、少しくらい汚してもかまわないようについ思ってしまう地球ですが、宇宙のほかの惑星と比べればずいぶんと小さな星です。太陽からの距離や大きさなど微妙なバランスによってこの地球の自然が存在しているのです。太陽系の惑星たちを見ていくと、地球という星がいかにすばらしいバランスでできているかがよくわかります。金星や火星やほかの星たちと比べてみればそれは一目瞭然です。またこれは惑星との比較だけでなく、太陽というわりと軽量の星の周りを回っているおかげで長い時間をかけての進化が許されたことなどもあげられます。そうした地球のすばらしさとその環境を守ることの大切さを明らかにしていくこともこれからの天文学の大きな役割です。またこれを伝えていくことは公開天文台の大きな使命でもあります。

ここ何年かで世の中の流れが大きく変わってきました。これまで追い求めてきた便利で豊かな社会に変わって、これからは自然と共存した人間らしい社会が求められようとしています。多少不便でも買い物袋や塗り箸を持参しようという考え方も広まりつつあります。そうした中で自然科学も変わろうとしています。資源を有効利用して豊かな生活をもたらす科学から、自然と共存するための術を明らかにしていく科学が広まろうとしています。共存すべき自然の本質とは何なのかを明らかにすることが自然科学者や博物館・天文台に求められてきています。そうした社会の求めに公開天文台として少しでも応えていければと思いの一つが今回の「広報たが」での連載です。このあと毎月の連載で「6月・春のもやと大気環境」「7月・宇宙の天気とオゾン層」「8月・大気の変化とスターウォッチング」と続けていく予定です。これからの環境を考えるためにも星を見ることの重要性はますます高まりそうです。

「広報たが」は滋賀県多賀町オフィシャルホームページより読むことができます。

※このニュースはダイニックアストロパーク天究館の高橋 進さんよりご投稿いただきました。

<関連リンク>

<関連ニュース>