内側と外側が逆回転している惑星系、誕生か

【2006年3月15日 NRAO Press Releases

太陽系の惑星がすべて同じ方向に公転していることを知っている人にとって、水星・金星・地球・火星が時計回りで木星・土星・天王星・海王星・冥王星が反時計回りに公転するような太陽系を想像するのは難しいだろう。惑星が一枚の回転ガス円盤から生まれることも知っていればなおさらだ。しかし、どうやら宇宙では、そのような想像を超えた惑星系が誕生しようとしているらしい。


内側と外側で逆の方向に回転する原始惑星系円盤の想像図

内側と外側で逆の方向に回転する原始惑星系円盤の想像図。クリックで拡大(提供:Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF)

天の川銀河内の原始惑星系円盤を研究している天文学者たちは、へびつかい座の方向500光年の距離にある若い星を調べて面食らってしまった。この星をとりまく原始惑星系円盤は、内側と外側が逆方向に回転していたからだ。このまましばらくたつと、内側の惑星が外側の惑星と逆方向に公転する惑星系ができあがるだろう。

「こんな原始惑星系円盤は前代未聞です。このような円盤での惑星形成は、われわれが考えてきたよりも複雑なものとなるに違いありません」と語るのは、超大型干渉電波望遠鏡(VLA)を使ってこの円盤を観測した、アメリカ国立電波天文台(NRAO)のレミヤン(Anthony Remijan)氏。

「普通の」惑星系がどのように誕生するかをおさらいしよう。ガスとちりの巨大な雲が重力によって収縮することで恒星と惑星が生まれるのだが、中心に向かって物質が真っ逆さまに落下することはない。それは、中心を基準にして見ると、雲が何らかの方向に回転しているからだ。腕を広げて回転するフィギュアスケートの選手が、その腕を内側に寄せると回転が速くなるのと同じように、回転している物質は内側に落ち込むほど回転速度が速くなる。高速で回転する物質はすぐには落ち込まず、原始星の周りにはガスとちりの回転円盤ができることになる。この円盤から、やがて惑星が誕生するのだ。

「おそらくこの原始惑星系に物質を供給した雲は、1つではなく2つあったのだと考えています」とレミヤン氏は言う。この原始惑星系円盤が置かれている環境は巨大な星形成領域で、星雲の中で渦巻くカオスと乱流が、違う方向に回転する小さな塊を作り出したのではないかとのことだ。

もっとも、天文学全体に目を向ければ、これは珍しい現象ではないという。レミヤン氏の共同研究者でNASAゴダード宇宙センターのホリス(Jan M. Hollis)によれば、「似たような構造や作用は、小さなスケールから大きなスケールまで、宇宙のいたるところで起きるのです。既に銀河の円盤で似たような現象が報告されていますから、原始惑星系円盤の中で回転方向が食い違ってるのが見つかっても、別に驚くほどのことではありません」とのことだ。