らせん状星雲をクローズアップ

【2006年1月28日 Spitzer Space Telescope Newsroom

「惑星状星雲」といえば、太陽程度の恒星が、進化の末期に放出したガスにより形づくられる星雲である。実際の「惑星」とは何の関係もないその名前は、望遠鏡で見ると、その大きさと円盤状に見える姿が惑星のような印象だったことからつけられたものだ。しかし、現代の望遠鏡で撮影された画像を見て、このような名前をつける者はいないだろう。最先端の赤外線天文衛星が撮影した、地球にもっとも近い惑星状星雲の姿には、驚くほど微細な構造が見られる。


スピッツァー宇宙望遠鏡が捉えたらせん状星雲(NGC 7293)

スピッツァー宇宙望遠鏡が捉えたらせん状星雲(NGC 7293)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/J. Hora (Harvard-Smithsonian CfA))

みずがめ座の方向にあるらせん状星雲(NGC 7293)は、距離およそ650光年と地球に最も近い惑星状星雲の一つだ。らせんの形を正面から見たかのような姿であることから、その名前がついた。しかし、最新の研究によれば、この星雲の本当の3次元構造は、互いに垂直な二つのリングらしい。地球からは、大きい方のリングをほぼ正面から見ているため、一個のリングのように見えるのだ。

しかし、らせん状星雲の全体像以上に、細部の構造も複雑で、美しく、議論に値するもののようだ。NASAの赤外線天文衛星・スピッツァーが撮影した画像を見ると、「らせんを正面から見たようだ」と思う前に、放射状に伸びるいくつもの筋に目がいく。よく見ると、中心の方に小さな「かたまり」があって、外側に向かって尾が伸びている。まるで彗星を思わせるかのような姿だが、その「核」に相当する部分は、われわれの太陽系で見られる彗星のそれとは似て非なるものだ。直径からして、太陽系そのものの二倍、そして地球ほどの質量の水素や、その他のガスがそこに集まっているのだ。

この写真は赤外線で撮影されたものを疑似カラーにしているものだが、中心の方に見られる青緑色は、実際に波長が短めであり、外側の赤い部分は、実際に波長が長いことを示している。波長が短いということは、それだけ大きなエネルギーを持つ物質から発せられた光である。中心付近ほど、らせん状星雲の中心星から発せられた紫外線にさらされたり、恒星風との衝突が起きやすいため、内側に行くほど青緑になる傾向があるのだ。

星雲の中央には、ほとんどガスのかたまりが見られない。中心星が発する強力な恒星風によって外側に吹き飛ばされてしまったのである。1つの星が作り出した美しい星雲は、造物主自身によって破壊されてしまう運命にあるのだ。


らせん状星雲 : みずがめ座にある惑星状星雲。大きさは満月の2分の1程度にも達し、見かけの大きさが最大の惑星状星雲である。とはいえ淡いので、実物を見るにはよく澄んだ暗い空であることが必須。さらに、円形に広がった姿を見るには中口径の望遠鏡の低倍率が必要である。写真では、らせんを描くように写ることから、この愛称がある。(「最新デジタル宇宙大百科」より)