フォーマルハウトを囲む塵に潜む惑星?

【2005年7月1日 国立天文台 アストロ・トピックス(111)

惑星系形成を探るヒントとなる、星の周りの塵のリングの詳細な画像が公開されました。

(近傍恒星フォーマルハウトのまわりに観測されたちりのリングの画像)

近傍恒星フォーマルハウトのまわりに観測されたちりのリング。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, P. Kalas and J. Graham(University of California, Berkeley), Space Flight Center)

その星の名前はフォーマルハウト。私たちの太陽系に非常に近い(25光年)のところにある恒星です。秋も深まった頃、南の空の低い空に白く冷たく光る1等星として見ることができます。みなみのうお座のα(アルファ)星で、「秋のひとつ星」とも呼ばれている恒星です。

カリフォルニア大学バークレー校のカラス(Paul Kalas)博士の観測チームは、惑星が隠れていると考えられるフォーマルハウトの周りの塵のリングをハッブル宇宙望遠鏡で観測しました。

彼らの狙いは、若い星の周りにある塵のリングや円盤を調べ、太陽系をはじめとする惑星系の形成を探る手がかりを得ようというのもです。フォーマルハウトの周り塵のリングが教えてくれることは、惑星形成期の後期の様子、つまり、惑星が惑星形成から取り残された塵の残骸と衝突し続けていた時期の姿です。

ハッブル宇宙望遠鏡は、塵のリングの構造をはっきりととらえています。画像からは、フォーマルハウトがリングの中心から外れたところにあることが確認されました。塵のリングの中心は星から20億キロメートル離れたところにあります。つまり、太陽-冥王星間の三分の一に匹敵するほど星とリングの中心は離れているのです。

なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?研究チームは見えない天体が楕円軌道を回っていて、その重力によってリングが変形したのではないかと考えています。フォーマルハウトの重力だけが作用しているなら、リングがこれほど斜めに傾いたり、中心と星の位置がそれほどずれたりすることはないからです。それでは、どんな天体がいるのでしょうか? もし、惑星よりも大きな天体、例えば褐色矮星がいたならば、ハッブル宇宙望遠鏡の画像に写っているはずですが、それは確認できませんでした。そのためリングに隠れている天体は惑星くらいの質量だと推測されます。つまり、フォーマルハウトには、 少なくとも一つ、見えない惑星があるはずです。シミュレーションによれば、リングの中心と星の位置のずれはおそらく海王星や木星くらいの大きさを持つ惑星が一つ以上あると考えれば説明できます。

残念ながら、この見えない惑星には生命は存在していないようです。隠れた惑星はフォーマルハウトから75億から105億キロメートル離れたところにあると予測されています。これでは、遠すぎて、生命を維持するには寒すぎます。仮に、惑星がもっと近くにいたとしても、やっぱり生命体が生存するのは難しいでしょう。フォーマルハウトは明るく、若い星で、重さは太陽の2〜3倍もあります。そのため、フォーマルハウトは太陽よりも短命で、寿命は10億年くらいです。一方、地球を典型例とすると、生命が充分な進化を遂げるには数十億年の時間がかかります。つまり、フォーマルハウトは惑星で生命が進化する前に 燃え尽きてしまうのです。

この研究成果は6月23日号のネイチャーで詳しく報告されています。

<参照>

  • 国立天文台 アストロ・トピックス(111): 星を囲む塵に潜む惑星?
  • P. Kalas et al.,“A planetary system as the origin of structure in Fomalhaut's dust belt” Nature, 405, 1067(23 June 2005)

<関連リンク>

<関連ニュース>