マクネイル星雲を輝かせる、若い星のX線アウトバーストのシナリオ

【2004年7月29日 Chandra Press Room

NASAのチャンドラX線観測衛星が、オリオン座のマクネイル星雲を輝かせる若い星のX線アウトバーストを捉えた。この星雲が起こしている明るさの変動についてのシナリオを解明するヒントとなりそうだ。

(マクネイル星雲のX線画像と可視光画像)

マクネイル星雲のX線画像(右囲み)と可視光画像。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/RIT/J.Kastner et al.;Optical: NSF/NOAO/KPNO/A.Block et al.)

われわれから1300光年離れたオリオン座に位置するマクネイル星雲は、今年1月にアメリカのアマチュア天文家によって明るくなっているところが発見された天体だ。1960年代にも可視光でかすかな姿が捉えられていたが、1950年代や1990年代には観測されていなかった。星雲の明るさが変動する原因は、星雲を照らしている奥深くの若い星がアウトバースト(突発的な増光)を起こすためである。X線観測のデータによれば、星の周りを回転しているガスから星の表面に突然物質が降り積もってアウトバーストが起こると考えられる。

通常、星を取り巻くガスの円盤から星へと向かうガスの流れは、星と円盤の磁場によって調節されている。しかし、円盤中にガスが大量に蓄えられると、ゆっくりと安定していたガスの流れが急激に変化し、円盤と星が異なる速度で回転するようになる。この異なる回転のために磁場がねじ曲がりゆがむことでエネルギーが蓄えられ、それが一気に解放されてX線アウトバーストとなるのだ。

一方、磁場は急激に元の安定な状態へと戻っていく。この一連の現象で星の表面に大量のガスが降り積もり、可視光や赤外線で観測されるアウトバーストとなるのである。また、円盤の中で新しくつくられたガスは、将来の新たなアウトバーストの材料となる。このようなサイクルが、マクネイル星雲の明るさが変化するシナリオの中身ではないかと考えられている。