超高速で家出してきた若い星

【2004年1月21日 CfA Press Release

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究によって、ある星団で誕生した50万歳の若い星が時速6万4千キロメートルという高速で30光年もの距離を移動してきたことがわかった。星団や連星系の外でこのように高速で移動する若い星が発見されたのは初めてのことである。

(NGC 7023とPV Cepの画像)

NGC 7023とPV Cep。左:可視光で捉えたNGC 7023、中央:NGC 7023とPV Cepの領域で放出されるちりを捉えた画像、右:天体から発せられるジェットの方向やガスの塊を線であらわしたもの。クリックで拡大(提供:David Aguilar, CfA)

発見されたのはケフェウス座にあるPV Cep(ケフェウス座PV星)という原始星で、約1400光年かなたにある。観測によれば、NGC 7023という星団で誕生したPV Cepは、自らの形成が終わらないうちに故郷である星団を離れたらしい。その後、からっぽの宇宙という大海を猛烈なスピードで旅し、現在の分子雲に安住の地を見つけたということのようだ。

その過去の旅程については、一番右の図に示されているように考えられている。PV Cepの両側にある黒い斑点(ハービッグ・ハロー天体)が若い星から両側にジェット状に放射されたガスによるものであると考え、そのペアをジェットに沿って線で結ぶと、中心点(交点)が若い星の位置を示すことになる。つまり、対応する斑点同士を結んだ中心点の移動がPV Cepの移動を表すことになるわけだ。こうして、PV CepがNGC 7023から30光年の距離を移動してきたルートが浮かび上がる。また、50万歳という星自体の年齢も、その移動時間と一致する。

しかし、PV Cepの動きそのものや、星団中でPV Cepをつくったディスクやガスがどんなものであったかについては、まだよくわかっていない。さらに、星団が星をはじき出すようなことが頻繁に起こっているのかどうかという謎も残されている。場合によっては、今後、星形成のモデル計算により複雑な効果を加える必要がでてくるかもしれない。まずは似たような高速移動天体を見つけ出すため、若い星の速度を計るという研究も進められようとしている。

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