ASAS-3自動サーベイ望遠鏡が記録したいて座新星(V4745 Sgr)

【2003年5月5日 VSOLJニュース(103)】

VSOLJニュース(102)のいて座の新星はV4745 Sgr(いて座V4745)と命名されました。この新星は極大を少し過ぎた時点で発見され、発見前の観測が発見後に複数報告されましたが、その中でASAS-3という自動サーベイ望遠鏡が増光途中を捉えるなど、驚くべき成果を挙げています。この自動サーベイ望遠鏡の本格稼動は、今後の変光星観測をすっかり変えてしまうほどの衝撃的な事件でしたので、紹介しておきたいと思います。

ASAS-3とは、"The All Sky Automated Survey"(ASAS)の第3世代の装置で、ポーランドのワルシャワ大学などの研究チームによって、チリのラス・カンパナス天文台に設置されています。観測装置は最大でも口径20cm強と小型ですが、広角CCDカメラを含めた3台の機材によって、観測できる空全体で14等星ぐらいまでの1000万個の星の変光を常時測定しようという野心的なシステムです。観測結果は即時に解析され、インターネット上で誰でもデータを検索する形で発表されています。天候や観測装置が順調であれば、ほぼ1.5ないし2日おきに全天のサーベイが行われ、装置が本格稼動を始めた今年3月以降は大量のデータが得られています。V4745 Sgrの発見前観測もこの装置によって得られたものでした。

ASAS-3の驚くべき点は、既知・未知を問わず、観測された星野であればほとんどどのような位置でも光度曲線が得られることで、新天体の出現時の過去データや新変光星の過去の動向なども座標を入力するだけで簡単に調べることができます。もちろん、既知変光星についても多くのデータが蓄積されており、ASAS-3が動いている限り、赤道より南の変光星はほとんどが記録されていると言っても過言ではないでしょう。天域によっては過去1-2年のデータを遡れるものもあります。今のところ主な観測対象は赤道より南で、北の星は観測不可能であることや、観測できる光度範囲が限られていること、まだ同定システムが完全でないために誤ったデータも多いこと、観測間隔の関係で突発現象に即応できないなどの制限はありますが、今後の変光星観測に大きな影響を与えることは間違いないでしょう。世界的にも変光星観測の一大転換点となりつつあるようです。

ASAS-3の光度曲線は、以下のアドレス("ID"には目的天体の座標を入れます。フォーマットは以下の説明をご参照ください)から見ることができます。

http://www.astrouw.edu.pl/cgi-asas/asas_lc/ID
  where ID has format HHMMSS-DDNN.N
        HHMMSS - right ascension,
        [+or-]DDNN.N - declination (DD -degrees, NN.N - minutes)

既知変光星については、座標入力の手間を省いて直接ASAS-3 の該当ページを参照する機能をVSNETに準備しました。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/gcvs/index.htmlから、星座名、天体名で該当天体を順次選び、"ASAS survey page"へのリンクをたどってください。

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