星のそよ風にはためくガスの吹き流し N44C

【2002年5月10日 STScI Press Releases

ボッティチェリの有名な絵画「ビーナスの誕生」に描かれたビーナスの髪の毛に似たこの写真は、NASAのハッブル宇宙望遠鏡が1996年に撮影した、大マゼラン雲にある電離水素領域 N44Cである。

(N44Cの写真)

大マゼラン雲のN44C領域。星やガスの複合体N44の一部である(提供:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)、謝辞:D. Garnett (University of Arizona))

N44Cは、若くて質量の大きい高温の星や星雲、たくさんの超新星爆発によって生じた「スーパーバブル」が混在している N44という複合体の一部である。若い星々の集まりを取り囲んでいる水素ガスが輝いて見えているのだ。

N44Cが特殊なのは、この領域を輝かせている星が異常に高温だという点である。太陽の10倍から50倍の質量を持つ大質量星の温度は、最大で摂氏3万度から5万度であるが、N44Cを輝かせている星はなんと摂氏7万5千度もあるのだ。このように高い温度である原因の一つとして、間欠的にX線を放射する中性子星やブラックホールの存在が考えられている。現在(観測当時)はX線が放射されていない期間ということだ。

図の右上には星雲状のフィラメント構造のネットワークが広がっている。このフィラメントはウォルフ・ライエ型星という特殊なタイプの星を取り囲んでいる。ウォルフ・ライエ型星は非常に強い荷電粒子の恒星風を吹き出しているのが特徴で、この恒星風と周りのガスが衝突することによってガスが輝くのである。また、図の左下の赤い部分は、N44を形成するスーパーバブルの一部である。

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