VLT に波面補償光学機器を設置
鮮明さはハッブルにも匹敵するほど

【2001年12月7日 ESO Press Release

南米チリのセロ・パラナル天文台にある VLT に新しい機器が搭載され、先日ファーストライトがおこなわれた。VLT プロジェクトはこれでまた一つ画期的な進歩を遂げたと言えるだろう。

(VLT による NGC 3603 の中心部の写真) (HST による NGC 3603 の中心部の写真) (NGC 3603 の写真)

星形成領域 NGC 3603 の写真。(上左)VLT 撮影の中心部、(上右)、HST 撮影の中心部、(下)1999 年に VLT + ISAAC 装置を使って撮影された全体像(写真提供:ESO / STScI)

この装置は「NAOS-CONICA 波面補償光学装置」と呼ばれている。通常、地上の望遠鏡の鮮明さは大気の揺らぎに制限されてしまうが、補償光学(Adaptive Optics)という技術を使えばこの欠点を克服することができる。この技術は、大気による像のゆがみに反応してコンピュータ制御で鏡をリアルタイムに変形させ、ゆがみをキャンセルしてしまうというもの。望遠鏡は、あたかも宇宙空間で観測しているかのように、大気の揺らぎに制限されることなく理論上の限界の能力で鮮明な像を結ぶことが可能になるのだ。

4 週間にもおよぶ作業を経て VLT のうちの一つ YEPUN 望遠鏡(UT4)に装置が取り付けられた後、先月 25 日に迎えたファーストライトでは、一機の VLT から得られた像としてはこれまでの中でもっとも鮮明なものが得られた。半値全幅(星像の明るさが半分になる部分の直径)0.07" は 8.2m という望遠鏡の口径と観測した波長(2.2μm の K バンド)から導かれる理論上の限界にかなり近い値である。その後おこなわれた J バンド(1.2μm)での観測では 0.04" という素晴らしい性能を達成した。

今回の成功は、VLT でハッブル宇宙望遠鏡並みの分解能での観測が可能になったことを意味している。パラナル天文台にある VLT の他の望遠鏡との連携により、さらに鮮明な像が得られるようになるだろう。

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