[訃報] フレッド・ホイル卿死去 定常宇宙論の提唱者

【2001年8月23日 BBC News (2001.08.22)

「定常宇宙論」の提唱者として知られるイギリスの天文学者フレッド・ホイル卿 (Fred Hoyle) が死去した。享年86歳。

卿はケンブリッジ大学の教授を務めていた1948年に、ボンディ (Hermann Bondi)、ゴールド (Thomas Gold) らとともに、宇宙は空間的にも時間的にも不変であるとする「定常宇宙論」を提唱し、多くの支持者を得た。

卿は、同じ1948年にアメリカのガモフ (George Gamow) が提唱した、宇宙は超高温・高密度の火の玉から生まれたとする「火の玉宇宙論」には懐疑的で、ガモフの理論のことを「まるで大きな爆発(ビッグバン)みたいにして宇宙は始まったんだとさ」と皮肉った。ところが、ガモフ自身がこの呼称を気に入ったことから、「火の玉宇宙論」は以後「ビッグバン宇宙論」と呼ばれるようになった。

1965年にベル研究所のペンジアス (Arno Allan Penzias)、ウィルソン (Robert Woodrow Wilson) らにより「ビッグバン宇宙論」の有力な証拠である「3K宇宙背景放射」が発見され、「定常宇宙論」がすっかり支持者を失ってしまった今では、卿は「定常宇宙論」の提唱者としてよりもむしろ「ビッグバン宇宙論」の名付け親として広く知られている。しかし、卿は最後まで自らの理論である「定常宇宙論」を捨てることは無かった。

卿は宇宙物理学の分野以外では、生命もしくは生命の構成要素は、彗星や宇宙塵などにより地球外からもたらされたとする胚種広布説(Panspermia Theory)の推進者としても知られる。

さらに、SF作家としても有名で、『暗黒星雲 (The Black Cloud)』(1957年)、『秘密国家ICE (Ossian's Ride)』(1959年)、『アンドロメダのA (A For Andromeda)』(1962年/共著:ジョン・エリオット; John Elliot/1961年放送の同名のBBCテレビシリーズのノベライズ) など、多くの著作を手がけた。

卿のご冥福をお祈りしたい。