新変光星ネームリスト76号の発行

【2001年7月22日 VSOLJ ニュース (066) (2001.07.20)】

銀河系内の変光星(新星なども含む)の最終命名は、国際天文学連合(IAU)の委託を受けて、ロシアのシュテルンベルク天文研究所(Sternberg Astronomical Institute)とロシア科学アカデミーとの共同作業で行われています。現在中心となって作業を進めているのが国際天文学連合第27委員会のサムシ(Samus')氏らによるチームです。

この命名の結果は変光星総合カタログ(General Catalogue of Variable Stars; GCVS と呼ばれる)として発表されてきました。このGCVSカタログは現在は電子化されており、シュテルンベルク天文研究所のウエブサイトから誰でもオンラインで入手可能になっています。さらに約1年に1度、その間に命名された新変光星について、「ネームリスト」(Name-List of Variable Stars) がGCVS編集チームから発表されています。この 7月 9日にネームリスト76号が発行されましたので紹介いたします。ネームリスト76号は以下から入手することができます。

http://www.konkoly.hu/cgi-bin/IBVS?5135

今回のネームリストでは、日本のアマチュアによって発見された変光星が数多く登録されました。高見澤今朝雄さんの発見された新変光星から601個、複数の観測者によるCCDサーベイを行っているMISAO project (吉田誠一、門田健一さん他) による新変光星から179個、長谷田勝美さんの発見された新変光星 (新星1個を含む) から34個、山本稔さんの発見された新変光星から1個、桜井幸夫さん、金津和義さん発見の新星からそれぞれ1個が命名されました。このネームリストで発表された新変光星が1406個ですから、日本のアマチュアの発見がなんと半数を超えています。この発見数・比率はネームリストの発行史上最大のものと思われます。

このリストに含まれている新星は以下の通りです。

     通称(慣用名)      確定名称        発見者
 Nova Sgr 2000 (いて座新星2000) = V4642 Sgr (いて座V4642) 桜井幸夫
 Nova Sct 2000 (たて座新星2000) = V463 Sct (たて座V463) 長谷田勝美
 Nova Pup 2000 (とも座新星2000) = V445 Pup (とも座V445) 金津和義
 Nova Sgr 2001 (いて座新星2001) = V4643 Sgr (いて座V4643) W. Liller

特異な新星と考えられている「金津天体」(V445 Pup, VSOLJニュース046,048参照) にも、このネームリストで Nova Pup 2000 (とも座新星2000) の通称が記載されました。天体のタイプは NC: 型 (新星の中でも特に遅いと思われるもの) とされています。GCVSにおける新星の分類は減光速度によってなされます(速い方から順にNA, NB, NCと分類される。また反復新星は NR と分類される)ので、この分類はこの天体の特異性を十分に表すものではありませんが、減光速度を基準とした現在の新星の分類の中では仕方がないところでしょう。

新星の(確定変光星名称の)命名は、最近は発見後の早い時期になされてIAUCでも公表されるようになった一方で、ネームリストの編集から発行までの時間差との関係で、すでに命名されている新星が最新のネームリストにまだ含まれない場合もあります。例えば長谷田勝美さん発見のNova Sco 2001(さそり座新星2001)=V1178Sco(VSOLJニュース063,064参照; その後この天体はより精密なスペクトル観測の結果、新星であることが判明しています)や、イギリスのCollinsの発見したNova Aql 2001(わし座新星2001)=V1548 Aql(VSOLJニュース057,058参照)は今回のネームリストにはまだ含まれていませんが、次号に含まれるでしょう。

なお、新星に関連したニュースや報道で多少の混乱がみられますので、いくつかの注意点を付記しておきます。

  1. すべての新星がIAUCで発表されるとは限りません。また新星かどうかの判断もすべてIAUCに公表されるとは限りません。新星の発見数などの最終的な調査のためには、GCVSやネームリスト(およびその参考文献)も確認する必要があります。

  2. 新星類似型変光星(新星状天体とも呼ばれる)は、GCVSやネームリストの確定分類では NL 型という、新星とは異なる型に分類されます。「まだ分類の確定していない新星」あるいは「確認作業段階の新星」と、新星類似型変光星(新星状天体)とは異なる概念ですので、混乱しないようにしましょう。

  3. 共生星新星(symbiotic nova)と呼ばれる一群の天体があります。赤色巨星をもつ共生星(symbiotic star)で起きる新星現象であるために特別の名称が付けられていますが、現象的には新星と同様に、近接連星系中の白色矮星表面の爆発的な核反応に由来するものと考えられています。新星の名を冠した通称は付けられないことが多いようですが、GCVSでは新星の一種に含められ、減光速度を基準として NC 型に分類されています。なお、ある新星が共生星新星かどうかは、爆発中の観測だけからでは区別が付けにくいことがあります。たとえば1994年に発見された「和久田天体」(V4368 Sgr)は現在に至っても、まだ共生星新星かどうかが確定していません。なお、この天体は GCVS では「非常に遅い新星」として NC 型に分類されています。

  4. 同じ天体において、新星爆発は本質的に反復して起きると考えられています。反復周期が非常に長いために、同じ天体での爆発は1回しか記録されないことが多いと考えられています。新星の一部には、その反復周期が比較的短く、歴史上複数回の爆発の観測されている天体があり、反復新星と呼ばれています。反復新星はこのように新星の一種であると考えられています。

  5. 新星以外にも「新星」の名を持つ天体があります。例えば矮新星やX線新星などの名称もよく使われていますが、これらは爆発的な増光を示すことから名付けられたもので、新星とは爆発メカニズムが異なります。矮新星とX線新星は、それぞれ白色矮星と、中性子星やブラックホールへの物質の突発的な降着現象に対応するもので、重力エネルギーの開放によって爆発的に明るくなるものです。

著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

<関連>

  • 国際変光星ネットワーク (VSNET)
  • 日本変光星観測者連盟 (VSOLJ)

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