太陽系以外の恒星系にも水

【2001年7月13日 SWAS Press Release (2001.07.11)

NASAのサブミリ波天文衛星 (Submillimeter Wave Astronomy Satellite; SWAS) の観測により、大規模な水蒸気の雲に覆われた恒星が発見された。太陽系以外の恒星系にも水が含まれることが確認されたのは今回がはじめて。太陽系によく似た太陽系外惑星系が存在する可能性を示唆する発見といえる。詳しい報告は、7月12日発行の科学誌『Nature』に掲載される。

問題の恒星は、「しし座」の方向約500光年の距離にあるIRC+10216 (別称:しし座CW) と呼ばれる恒星で、年老いて大きく膨れ上がった赤色巨星である。Gary Melnick博士 (ハーバード・スミソニアン天体物理学センター) を代表とするSWASミッション・チームでは、観測された水蒸気の雲は、恒星の膨張に伴って周囲を巡る彗星――いわば汚れた雪玉――から蒸発したものである可能性が高いと考えている。ただし、観測された水蒸気の存在量を説明するためには、恒星から75〜300天文単位 (1天文単位は、太陽〜地球間の平均距離で、約1億5000万キロメートル) の範囲に数千億個もの彗星が存在する必要があるという。

ただ、チームの一員であるSaavik Ford氏 (ジョーンズ・ホプキンス大学大学院生) によると「多いように思えるでしょうけど、これは私たちの太陽をとりまくカイパーベルトにある天体の総質量と同程度なんです」という。カイパーベルトとは、海王星以遠に広がる氷の天体の群で、彗星の故郷である。そして、「太陽系では、彗星は太陽に近づいたときにだけ蒸発し、コマや尾といった彗星の特徴を見せますが、IRC+10216の場合、太陽よりはるかに明るいため、カイパーベルト並の遠距離にあっても彗星は蒸発してしまうんです。だから、IRC+10216のまわりでは、数千億個の彗星がいっぺんに蒸発しているわけです。」

また、IRC+10216のようすは、私たちの太陽系の未来の姿を表しているという。チームの一員であるDavid Neufeld博士 (ジョーンズ・ホプキンス大学物理学・天文学教授) によると、「数十億年後、私たちの太陽も膨れ上がって赤色巨星となり、エネルギー放射量は現在の5000倍程度に増すでしょう。太陽の明るさが増すにつれ、だんだん太陽系のより外側にある水が蒸発するようになります。はじめは地球の海、やがては海王星以遠まで。そして冥王星のような巨大な氷の天体もほとんど蒸発してしまい、熱い岩だけが残されます」ということだ。