[HST] 惑星が形成されつつある現場をはじめてとらえる

【2001年5月1日 STScI-PR01-13 (2001.04.26)

ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) の観測により、太陽系から1500光年ほど離れた星生成領域「オリオン大星雲」の中に、惑星の形成のごく初期段階にある現場が複数発見された。惑星の形成現場の画像が得られたのは今回がはじめて。

惑星形成初期段階にある原始惑星系円盤

これらの画像は、幼い恒星を取り巻く原始惑星系円盤の中で、惑星の構成要素となる粒子が成長しつつある現場をとらえたものだ。John Bally氏 (コロラド大学)、Henry Throop氏 (サウスウェスト総合研究所) などからなる研究チームでは、原始惑星系円盤を通りぬけてくる恒星からの光を分析することで、円盤の中に含まれる粒子の大きさを推定した。その結果、煙の粒子〜砂粒ぐらいの大きさであり、これまで知られているどの星生成のものと比べても大きいということがわかった。

これは、これらの原始惑星系円盤が、惑星の形成のごく初期の段階にあるということを示すものである。惑星形成に関する通説のシナリオでは、粒子は今後も雪だるま式に成長しつづけ、やがて重力により互いに引き合って集まり、最終的には惑星が形成される。

ただし、今回発見された惑星の形成現場は、星雲内で最大の巨星「オリオン座シータ1C星」(星雲中心部の「トラペジウム星団」の星のひとつで、小口径望遠鏡で充分観測可能) からの強力な紫外線を受けて不安定化しつつあるため、実際に惑星が誕生するかどうかはわからない。

研究チームでは、オリオン大星雲の原始惑星系円盤のうち90%は惑星の誕生前に崩壊してしまうだろうと推定している。だが、残りの10%については惑星の形成は平常通り進み、やがてさまざまな惑星が誕生すると考えられる。

1998年2月26日および1999年1月11日、HSTの広視野/惑星カメラ2による撮影。

なお、STScIのプレスリリースページにて、高解像度画像のほか、オリオン大星雲の3D飛行ムービーなどが見れるので、ぜひ参照してほしい。

Credits: NASA, J. Bally (University of Colorado, Boulder, CO), H. Throop (Southwest Research Institute, Boulder, CO), C.R. O'Dell (Vanderbilt University, Nashville, TN)