Lillerの天体、新星と確認される

【2001年2月26日 VSOLJニュース (050) (2001.02.26)】

VSOLJ ニュース (049) でチリの Liller が新星と思われる天体を発見したことを速報しましたが、その後の観測で新星であることが確認され、「いて座新星2001」と呼ばれる (*1) ことになりました (IAUC 7589) 。銀河系で発見された今世紀最初の新星です。

NovaSgr2001

(*1) 新星は変光星(明るさの変化する星)の一種でもあり、新星の最終的な正式名称には変光星としての名称が与えられます。たとえば、1999年年末に久々の肉眼新星となったわし座1999年第2新星(VSOLJニュース 027参照)には、V1494 Aql (わし座V1494) という最終名称が与えられました。超新星などとは違って、「いて座新星2001」のような名称は一種の「通称」で、新星によっては複数の異なった通称が使われている場合があったり、あるいは新星としての性質の確認に時間のかかった場合などには、通称が付けられないままに最終名称が先に与えられる場合もあることに注意する必要があります。

まず、天体の存在確認は発見者の Liller によって、また複数の眼視観測者によって行われました。もっとも早い時刻に確認を行った観測者には、ニュージーランドの Albert Jones、オーストラリアの Rod Stubbings、日本の広沢憲治さん、前原裕之さんなどが含まれています。発見時の等級は7.7等と報じられましたが、2月25日の眼視観測では9.0等前後で報告されています。

新星の確認に必要なスペクトル観測は、美星天文台の綾仁・川端さんによって行われました(vsnet-alert 5723; IAUC 7589)。25.88日に1.01m望遠鏡で撮られたスペクトルでは強く幅広い水素の輝線が見られ、天体が急激に膨張していることを示しています。水素のHα輝線の幅は速度に換算して4700km/sもあり、天体は「速い新星」の可能性があります。減光が速いかも知れませんので、観測される方はなるべく早いうちに望遠鏡を向けられるとよいでしょう。なお、発見者の Liller も低い分散ながらスペクトルの撮影を行っており、輝線を検出しています。

新星の精測位置も複数の観測者によって報告されており、現在までの時点で一番正確と思われる座標は、門田健一さんによれば

17h 54m 40.43s, -26゚ 14' 15.7" (J2000.0)
チリのLillerが発見したいて座の新星らしき天体

と求められています。この位置の近くには爆発前の写真で16-17等の星があり、爆発した新星の爆発前の星か、あるいは偶然近くに見えている別の星か、まだ決着が付いていません。正確な同定のためには、さらに詳しい測定が必要でしょう。

なお、この天体は静岡県の西村栄男さんも2月24.833日撮影のフィルム上に約7.5等の天体として気付かれていました(vsnet-alert 5734)。

爆発前では、長野県の高見澤さんが2月19.831日撮影のフィルムに13.7等以下で写っていないと報告されています。このことからも、この新星は変化の速いタイプのものであることが推察されます。

新星の観測用星図は以下の URL をご覧ください。

Reinder BoumaとEdwin van Dijkが作図したものです。

また、VSNETでは以下のページを作成しました。発見から確認に至る詳しい情報や比較星光度の情報とともに、今後報告される光度変化などもグラフで表示される予定です(Java対応のブラウザが必要です)。

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