ニア・シューメーカー、小惑星エロスに着陸

【2001年2月16日 国立天文台天文ニュース (415) (2001.02.15)】

昨年2月以来小惑星(433)エロスを周回してその観測を続けていた小惑星探査機ニア・シューメーカー (Near Earth Asteroid Rendezvous; NEAR-Shoemaker) は、観測の最後を飾る作業としてエロスへ軟着陸を試み、2001年2月12日20時2分10秒(世界時)、無事に着陸に成功しました。小惑星に探査機が着陸したのは宇宙観測史上初めてのことです。着陸後も通信は続けられています。

探査機ニア・シューメーカーは、エロスを観測する目的で5年前の1996年2月に打ち上げられました。途中で97年6月に小惑星(253)マチルドを1200キロメートルの距離から接近観測し、その後1999年2月に目的のエロスに接近しました。しかしこのときはエンジンの点火に失敗し、エロスを通り過ぎてしまいました。しかし、1年後の2000年2月再びエロスに接近して、今度は減速に成功、バレンタイン・デイの14日にうまくその周回軌道に入りました。その後の観測で、16万枚以上のエロスの画像を地球に送ってきています。この段階になって、探査機をコントロールする燃料が残り少なくなったため、最後に、始めは予定されていなかったエロスへの軟着陸を試みることになったのです。

2月12日13時31分(世界時)、高度25キロメートルのところで周回軌道を離脱、その後4回の減速操作をおこない、最終的に秒速1.9メートルで、ニア・シューメーカーは、エロス上のある窪地のすぐ外側への歴史的な着陸に成功しました。飛行中の最後の画像は高度120メートルから撮影したもので、エロス表面の6メートル四方が撮影されています。史上初めての小惑星への着陸はこうして成し遂げられたのでした。

エロスは1898年に発見された小惑星です。長半径が1.458天文単位、1.76年の周期で太陽の回りを公転しています。1931年には地球に2300万キロメートルに接近し、その機会に、太陽系の大きさを決める目的で観測されたこともありました。長軸33キロメートル、短軸13キロメートルのピーナツのような細長い形をして、5.27日の周期で自転しています。その表面重力は場所によって異なりますが、ざっと地球の500分の1から1000分の1で、脱出速度は毎秒30メートル程度です。エロスの上で速球投手がボールを投げたとすると、そのボールはエロスから離れて太陽系空間へ飛び出してしまうことでしょう。

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