宇宙ステーション「ミール」の落下

【2001年2月16日 国立天文台天文ニュース (416) (2001.02.15)】

ロシアの宇宙ステーション「ミール」が廃棄され、きたる3月上旬に南太平洋に落とされる予定と伝えられます。この落下を観測しようという動きが広まっています。

「ミール」は1986年に旧ソビエト連邦が打ち上げた宇宙ステーションで、それ以来15年にわたって、有人宇宙活動の重要な拠点として活躍してきました。しかし、しだいに老朽化して故障が相次ぐようになり、なんとか維持しようというさまざまな提案はありましたが、結局廃棄が決定されました。「ミール」は総重量が130トンを越える大きなステーションですから、大気圏に突入したときは、明るく輝き、一種の花火のような壮観を呈するに違いありません。その際、エンジン、骨格など、重量のある構造物の一部は燃え尽きず、地表まで到達する可能性があります。そこで、落下時の危険を避けるため、ある時点で速度を落とし、危険の少ない南太平洋へ落下させる計画が進められています。そのための燃料を積んだ無人補給船プログレスが「ミール」とのドッキングを1月27日に完了しています。落下を予定している地域は、ニュージーランドの東約4000キロメートル、タヒチ島の南約3700キロメートルの、ほとんど島のない洋上ということです。

あらかじめわかった時刻帯にこれだけ大きな物体が大気圏に突入するのは、めったにあることではありません。これは大型の宇宙建造物と大気との相互作用を知り、発光の状況を調べるチャンスでもあるのです。そのため、アメリカでは、航空機をチャーターして、研究者、希望者、テレビジョン関係者を乗せ、9000メートルの高さ、落下コースから300キロメートル離れた上空で、「ミール」の落下を間近に観察しようという計画が進行中だそうです。一般の希望者がこのフライトに乗るための費用は6000ドルということです。

南太平洋に落ちる直前に、「ミール」は北半球の中緯度で太平洋西部を通る可能性があります。150キロメートルくらいの高度で、大気中を発光しながら通過する「ミール」が日本から見えるかもしれません(見えないかもしれませんが)。見えるときには、その落下を科学的な立場から、公開天文台、アマチュア観測者などでネットワークを作って観測しようという動きが日本でもあります。個人レベルの話ではありますが、もし、3月上旬(8〜10日前後)の数日、「ミール」の落下観測に協力していただける方がありましたら、2月28日までに

avell@pub.mtk.nao.ac.jp (阿部新助、国立天文台/総研大)

宛て、電子メールでご連絡頂きたいそうです。観測形態のマニュアル、軌道データなどの観測に必要な情報は、電子メールを通じて阿部の方から提供する予定ということです。