大質量の系外惑星

【2001年2月2日 国立天文台天文ニュース (412) (2001.02.01)】

木星質量の17倍に達する大質量の系外惑星が発見されました。この天体は、質量からいうと惑星というよりも褐色わい星であり、惑星と褐色わい星をつなぐ存在としても、また、この種の惑星系が形成される過程の点からも、興味を呼んでいます。

ひとつの恒星が2個以上の惑星をもつ系外惑星系はすでに5組ほど発見され、その惑星配置がどのようにして生じたかが問題になっています。太陽系の惑星から想像される配置とは大きく違っているからです。3個の惑星をもつ「アンドロメダ座ウプシロン星」については、一昨年の天文ニュース(252)でお知らせしました。今回の惑星は、2001年1月7日から11日にかけてサンディエゴで開催されたアメリカ天文学会講演会で、カリフォルニア大学のマーシー (Marcy,G.) とカーネギー研究所のバトラー (Butler,P.) が報告したものです。その発表によりますと、「へび座」の7等星HD168443には、それぞれ木星の17.1倍および7.2倍の質量をもつ二つの惑星があり、前者は長半径2.87天文単位、離心率0.2の軌道で5.85年の周期で公転、後者は長半径0.29天文単位、離心率0.54の軌道で57.9日の周期で公転しているということです。この大きい方の惑星は、惑星というよりも、恒星になり損ねた褐色わい星の質量をもっています。つまり、中心の恒星の周りを公転しているという点からは惑星であり、質量の点からは理論的には褐色わい星なのです(木星質量の13倍程度が惑星と褐色わい星の境界といわれています)。しかし、その質量はこれまでに発見されている褐色わい星と惑星とのちょうど中間にあるため、両者をつなぐものであるかどうか議論になっています。なお、HD168443は123光年の距離にあり、スペクトルがG5型の太陽に似た星です。またHDとは1918-1924年にハーバード大学から出版された分光カタログであるヘンリー・ドレーパー星表 (The Henry Draper Catalogue) のことで、そのカタログ番号で星を表しているのです。

ところで、このような惑星系はどのようなプロセスで生まれたものでしょうか。惑星と恒星とが通常の連星系として誕生したとしては、両者の質量差がありすぎます。通常考えられている氷や岩石の核に周囲のガスが集積して惑星が誕生するプロセスでは、HD168443の原始惑星系円盤の存在時間(数100万年)に必要な質量を集めることができるか疑問があります。円盤に不安定が生じて惑星ができるという考え方がいいのかもしれません。大質量の巨大惑星は、いろいろの点から天文学者の興味と関心を集めています。

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