ガンマ線バーストは長期型と短期型で起源が異なる?

【2000年11月15日 NASA GSFC Press Release No. 00-132

NASAの研究チームが、ガンマ線バーストの起源には少なくとも2種類あるらしいということを突き止めた。

ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から突然多量のガンマ線が爆発的に放射される現象であり、ビッグバンに次いで宇宙でもっとも規模の大きい爆発現象と考えられているものだ。ひじょうに遠方の太古の宇宙に起源を持つらしいことは知られているが、その正体は謎につつまれており、近代天文学最大の謎ともいわれる。

その正体については、2つの超高密度天体――中性子星やブラックホール――が衝突・融合する際に生じたものであるとする説や、超巨星が崩壊する際の大爆発である「超超新星爆発 (hypernova)」(超新星爆発と似たプロセスだが、ずっと規模が大きい) であるとする説などが考えられている。

ガンマ線バーストの継続時間は数ミリ秒から1000秒以上までさまざまだが、NASAのゴダード宇宙飛行センターのJay Norris博士らは、数百のガンマ線バーストについての観測データを分析した結果、継続時間が2秒以下の短期型と継続時間が2秒以上の長期型ではまったく性格が異なるということを発見した。

Norris博士らの用いた分析手法は、バーストに含まれるガンマ線パルスを分析するというもの。ガンマ線とはひじょうに高い周波数を持つ電磁波のことで、光のもっとも高エネルギーな形態である。ひとつのガンマ線バーストは、数千のガンマ線光子を含み、さらにそれらのガンマ線光子は小さなパルス (ほぼ同時にガンマ線検出装置に到達するグループ) に分かれている。Norris博士らは、それぞれのガンマ線バーストに含まれるパルスの数や、比較的高エネルギーなパルスの検出から比較的低エネルギーなパルスの検出までのタイムラグなどを分析した。

それによると、短期型ガンマ線バーストは長期型に比べて著しく少ないパルスしか含んでおらず、また比較的高エネルギーなパルスの検出から比較的低エネルギーなパルスの検出までのタイムラグは長期型のそれの20分の1しかないという。これらのことから、長期型と短期型はまったく別の起源であるらしいと示唆された。

加えて、短期型バーストにおいてはタイムラグはバーストの最大強度とは無関係だが、多様な長期型バーストにおいてはタイムラグと最大強度は関係しているということも判明した。

これらの結果は、アリゾナ大学のWilliam Paciesas博士が最近発表した、短期型バーストは長期型バーストとは著しく異なるという論文ともよく整合する。

NASAの研究チームの一員であるJerry Bonnell氏は、短期型バーストの起源は2つの中性子星の融合ではないかと考えている。この理論なら、バーストの継続時間が短いこととつじつまが合うという。

ガンマ線バーストには、ガンマ線以外のX線や可視光においての余光 (afterglow) が伴なうことが比較的最近明らかになっており、観測例も増えてきている。それによると、ガンマ線バーストは遠方銀河の星生成領域に関係があるらしいことがわかっている。また、ガンマ線バーストの継続時間が最大でも1000秒程度なのに対し、余光は場合によっては1か月以上も見えつづけているということも明らかになっている。しかし、それは長期型バーストに限った話だ。継続時間が最大でもわずか2秒に過ぎない短期型ガンマ線バーストに関しては、未だに余光の観測成功例は無く、余光が存在するのかどうかさえ不明である。今までは、ガンマ線バースト検出報告の速報性や初期位置測定の精度に問題があったためだ。

しかし、2000年10月9日には日本・アメリカ・フランス共同によるガンマ線バースト観測衛星「HETE-2」の打ち上げが成功した。この衛星の役割は、ガンマ線バーストの発生を監視し、すばやく高精度な位置速報を行なうことである。これにより、バースト発生のほぼ直後に各種望遠鏡をバースト発生地点に向けることが可能となる。2000年12月中には本格稼動が始まる予定のこの衛星の活躍により、短期型バーストの余光の謎を含め、多くの新事実が明らかになると期待されている。

さらに2003年には、NASAのガンマ線バースト観測衛星「Swift」の打ち上げも予定されている。この衛星は、HETE-2よりさらに高精度の位置速報を行なうだけでなく、X線望遠鏡 (XRT) および紫外/光学望遠鏡 (UVOT) も搭載しており、自身で複数波長域における余光の観測まで行なう。

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