18個の主星を持たない惑星状天体の発見

【2000年10月10日 EurekAlert! (2000.10.5)

スペイン、アメリカ、ドイツの共同研究チームが、「オリオン座シグマ星団」に18個の単独で存在する惑星状の天体を発見し、10月6日付けの科学誌『Science』で発表した。「オリオン座シグマ星団」は誕生から500万年以下の若い星団で、地球から比較的近い。

惑星は通常、太陽のような恒星が誕生する過程で生じるガスやダストの巨大な渦(降着円盤)の中で生成されると考えられるが、今回研究チームが発見した天体は、質量や温度では惑星と分類できるが、太陽のような主星を持たず、単独で存在しているという特異な天体だ。

ところで、恒星と同様の過程で生成されながら、充分な質量に達することができなかったために恒星としての輝きを放てない星を褐色矮星という。褐色矮星は木星質量の13倍〜75倍程度の質量を持つ。通常、木星質量の13倍以下の場合は惑星と分類される。研究チームが発見した天体はこの褐色矮星に分類すべきものである可能性もある。

可視光および近赤外線により撮影された画像によると、問題の18個の天体はどれも比較的暗く赤色であり、低温であることがうかがえる。しかし、若く比較的高温な褐色矮星がチリの覆われた状態にある場合、雲の外からは赤く見える。

そこでチームでは、これらの天体のうち3つのスペクトルをハワイのケック10メートル望遠鏡を用いて分析し、3つがどれも若いガス惑星であるとした場合に予想される程度の低温であることを確認している。

チームが観測データを元に推定したところによると、18個の天体の質量は、天体が星団と同じ500万歳程度とすると木星質量の8倍〜15倍、さらに天体が100万歳程度とした場合はもっとも小さい天体は木星質量のわずか5倍程度になるという。

論文の主執筆者Maria Rosa Zapatero Osorio氏(スペインのInstituto de Astrofisica de Canarias所属、現在はアメリカのカリフォルニア工科大学で働いている)によると、このように単独で存在する惑星状の天体の生成は、現在の惑星の生成理論で説明することは難しく、これらの生成過程をどう説明するかということが最も興味をそそられる問題という。

チームが発見した天体を惑星と分類すべきか、または例外的に低質量で低温の褐色矮星と分類すべきかについては問題が残る。どちらにせよ、Zapatero Osorio氏らによると、過去の例から言うと、今回研究の対象にしたような比較的狭い領域にこれほどまでに多くの褐色矮星が発見されたということは驚きに値するという。

そして、Zapatero Osorio氏はこう言っている。

「惑星は主星のまわりを巡らなければならないというのなら、私たちが発見した天体は超低質量の褐色矮星と分類されるでしょう。ですが、質量が特定の条件に当てはまれば惑星だというのであれば、惑星と分類できます。これは単に専門用語の扱い方の問題なのです。」

そして、銀河系の多くの星は「オリオン座シグマ星団」に似た星団として誕生したと考えられるため、古い孤立惑星はじつはありふれた存在であり、現在の観測装置の性能では淡すぎて検出できないだけかもしれないということだ。

<関連ニュース>