小惑星エロスの観測結果

【2000年9月28日 国立天文台ニュース(381)

探査機ニア・シューメーカーによって観測がおこなわれている小惑星(433)エロスに関して、明らかになったいくつかの事実をお知らせします。

ニア・シューメーカーは今年の2月14日以来エロスを周回する軌道に入り、近いときは35キロメートル、遠いときで350キロメートルの距離から、10万枚以上の画像を撮影、レーザーによる距離測定を800万回以上実施し、エロスの形状、組成、地形、構造などに関して広範な観測を続けてきました。 エロスを作っている岩石が普通コンドライトであることは天文ニュース(358)でお伝えしました。 その他に、以下のことが明らかになっています。

エロスは長さ33キロメートル、直径13キロメートルの細長い円柱を中央で少し折り曲げたような形をしています。 下記のホームページでその形を見ることができます。 さやに入ったままのピーナッツの形とでもいえばいくらか近いでしょうか。 質量は10の15乗キログラムの単位で6.678、平均密度が1立方センチメートル当たり2.7グラムで、これは地球の地殻の密度に近い値です。 表面重力は場所によって異なりますが、毎秒毎秒2.3から5.5ミリメートルです。 これは地球上で体重60キログラムの人がたった14から34グラムになってしまう重力です。 エロスの上で野球のボールを投げると、それはもう落ちてこないで宇宙の彼方に飛び去ってしまうでしょう。 またエロスは、そのもっとも短い軸の周りに5時間16分の周期で自転をしています。

小惑星には、こわれた岩石のかけらがたくさん集積しているタイプのものもあると考えられていますが、エロスはそうではなく、表面に転がっている岩石破片を別にすれば、全体が一つの塊で、コア、マントルといった区別のない内部まで一様な岩石と推定されます。 もっと大きい小惑星から数100万年前に欠け落ちた破片ではないかと、ジェット推進研究所のヨーマンス(Yeomans, D.)は述べています。 エロスの表面はたくさんのクレーターで埋め尽くされ、最大のクレーターは直径が5.5キロメートルもあります。

ニア・シューメーカーは現在地球から1億7600万キロメートルの距離にあり、100キロメートル程度の高度、時速8キロメートル以下の速さでエロスを周回しています。 今後しだいに高度を下げて、10月末には6キロメートルにまで接近し、さらにそのあとゆっくり降下して、2001年2月にエロス表面に着陸し、観測を終わる予定です。

参照http://near.jhuapl.edu/news/articles/00sep21/
http://www.jpl.nasa.gov/releases/2000/eros2000.html