VLTの4号機もファーストライト

【2000年9月7日 国立天文台ニュース(375)

ヨーロッパ南天天文台が建設している大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)群の4号機(最終機)が、ファーストライト(初観測)に成功しました。

VLTは、ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory; ESO)が総力を挙げて、チリ、セロ・パラナルの標高2632メートルの山頂に建設している4機の大型望遠鏡群です。 それぞれの口径が8.2メートル、1機だけでも、国立天文台の望遠鏡「すばる」に匹敵する口径をもっています。 1号機アントゥ(ANTU)は1998年5月に初観測に成功しました(天文ニュース179)。 その後建設は順調に進み、2号機のクェイエン(KUEYEN)は1999年3月に、3号機のメリパル(MELIPAL)は2000年1月にそれぞれ初観測をおこないました。 そして今回、最終機のイエプーン(YEPUN)が完成、ファーストライトを受光したのです。

イエプーンのファーストライトの目標には、「や座」と「わし座」の境界付近にある惑星状星雲のHen 2-428が選ばれました。 この惑星状星雲は銀河面から見かけ上2度しか離れていない星の濃密な星野にあり、距離は6000光年ないし8000光年と推定されています。 9月4日1時46分(世界時)、制御室のコンピュータ・スクリーンにその像が映し出されますと、「悪くないね」、「とてもいいじゃないか」といった賞賛の言葉が飛び交いました。 この写真はESOのホームページで見ることができます。 ひき続いて、局部銀河群のわい小銀河NGC 6822や、渦巻銀河NGC 7793が映し出されました。

VLTはこれで一応4機が揃いました。 これで実質口径16.4メートルの巨大望遠鏡として使うことができますが、さらに今後は、これらを光学干渉計として動作させる予定になっています。 干渉計にすると、これは口径130メートルに相当する分解能をもつはずです。 しかし、そのためには、光の位相を合わせる高度な技術が必要になります。 とりあえず2機の望遠鏡による干渉計としてのファーストライトは、来年半ばに予定されています。

これらの望遠鏡にはそれぞれ固有名がつけられています。 これらはすべて付近の原住民であるマプチェ(Mapuche)族の言葉によるもので、アントゥ(ANTU)は太陽、クェイエン(KUEYEN)は月、メリパル(MELIPAL)は南十字、イエプーン(YEPUN)は宵の明星を意味します。 マプチェ族は、主としてサンチャゴの500キロメートルほど南にあるビオビオ川の南側に居住している部族です。

参照 ESO Press Release 18/00(Sept.4,2000)