21世紀最初の皆既月食中にδGemの星食が見られる!

【2000年9月6日 佐藤 勲氏 ONM No.543】

去る7月16日の皆既月食の時のマスコミの報道で、まるであと120年後まで皆既月食が見られないかのような誤解を与えてしまった感もあるが、実は、21世紀最初の皆既月食は、来年1月9日(日本時間1月10日未明)に見られ、21世紀最初のメジャーな天文現象となるのである。

さて、その皆既月食中に、なんと3.5等星ふたご座δ星の星食が全国で見られる。 月食中には、通常の満月時より暗い星の星食まで見られるが、月食自体の明るさが 違うこともあって、意外に暗い星食まで見られることは少ない。 そんな中で、このδGemの星食は、ダントツといっていい明るさである。 実は、皆既月食中のδGemの星食は、1メトン周期前の1982年1月9日の皆既月食の時にも起こっている。 この時は、日本では星食は見られなかったが、南限界線がオーストラリア、北限界線がフィリピンを通り、国際掩蔽観測協会(IOTA)の Dadiv Herald がアリススプリングズ近郊へ、Paul Maley と Chuck Herold がルソン島へ遠征し、両限界線の観測に成功している。 偶然だが、マッカーサー率いる米軍は、1945年1月9日にルソン島へ上陸している。

1985年5月4日、てんびん座α2星の北限界線がスーダン、南限界線が南アフリカを通り、Paul Maley, Chuck Herold, David Dunham他数名がスーダンへ、他の多くの観測者が南アフリカで観測を行った。

今回は、北限界線がシベリア、南限界線が香港近郊を通るので、南限界線は観測できそうである。 今回も香港付近での南限界線観測ツアーが企画されるのだろうか?

なお、月食中に起こり得る最も明るい星食は、レグルスとスピカの星食、それに火星食、木星食、土星食であるが、当分起こらない。