赤外線宇宙望遠鏡ISO、原始惑星系を観測 (ESA)

【2000年5月17日 ESA

Jose Cernicharo氏をはじめとするスペインの天文学者チームが、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線宇宙望遠鏡ISOを用いて形成初期段階にある原始惑星系を観測し、そのダスト円盤(降着円盤)のサイズをはじめて計測することに成功した。この研究報告は『Science』誌の第288号で発表されている。

惑星系形成の初期段階は、厚く不透明なダスト(チリ)の「繭」に覆われているため観測が難しく、これまではごくわずかなことしかわかっていなかった。

今回ISOにより観測された原始惑星系はVLA1/2と呼ばれるもので、地球から1200光年程度の距離にあるオリオン大星雲の中にある。この星系は、中心星がまだ輝き始める前の段階にあると考えられていたが、ISOの観測結果はその予想に反するものだった。

ISOの観測によると、中心星とその周囲の平均温度は低く見積もっても500ケルビン程度で、これは中心星が「恒星」として輝きを始めていることを示していた。そして中心星の周りには降着円盤が形成され、その大きさは木星の軌道程度であることがわかった。この降着円盤の中で、やがて惑星が誕生すると考えられる。

ISOの観測では、中心星と降着円盤をとりまく「繭」の化学組成も初めてわかった。それによると、「繭」は中心星や降着円盤に比べてずっと低温で、ダストは水や二酸化炭素、メタン、そしておそらくメタノールなどの氷に覆われている。

また、今回ISOが観測したような原始惑星系は、地上からでは観測不能な遠赤外線でしか観測できないと考えられてきたが、今回のISOによる観測結果によると、地球大気を貫通可能な波長域の放射も十分放っており、新世代の8m級の赤外線望遠鏡を用いれば地上からでも観測可能らしいことが判明した。研究チームによると、このことは今回の研究成果で重要な点の1つだという。

なお、今回の研究にはスペイン・グラナダの近郊、ベレタ山頂に設置されたミリ波電波天文学研究所(Institute de Radioastronomie Millimetrique; IRAM)の30m電波望遠鏡による観測結果も併用された。

ISOは1995年12月から1998年5月まで、設計寿命を1年近くも超えて運用された。その間に30,000近くの科学観測を行なった。