高見沢さん、山本さん、わし座に新星を発見、1917年の新星 CI Aql の83年ぶりの再発見と確認

【2000年5月1日 VSOLJニュース(040)】

長野県の高見澤今朝雄氏は、2000年 4月28.669日(世界時)にわし座を撮影したフィルムに10等星の新星らしき天体を発見されました。 発見位置が1917年ハイデルベルク天文台の写真からラインムートの発見した新星らしい天体 CI Aql(わし座CI)の位置に極めて近いことから、この天体の再爆発(再発見)の可能性がありました。 高見澤さんとは独立に、愛知県の山本稔氏も 4月28.694日の写真から、CI Aqlと思われる天体が9.8等に増光していることを検出され、VSOLJ(日本変光星観測者連盟)に報告されました。 実 CI Aql の同定を目指した研究が以前になされており、1995年インディアナ大学の自動望遠鏡(RoboScope)によって発見位置の近くに周期0.618日の奇妙な食変光星が発見されていました(IBVS 4232,4338)。 この天体は通常の食連星ではまず見られない電離ヘリウムの輝線が見られる一方、静穏状態に戻った新星に通常見られる水素の輝線が見られませんでした。 この天体は特異な連星であることは確かでしたが、爆発した CI Aql と確実に同定するにはさらなる証拠が必要でした。 また、VSOLJニュース (022) にあるような、特異なブラックホールX線新星などの特異天体の可能性も否定できませんでした。

この2つの発見報告を受けて、国立天文台岡山天体物理観測所で観測中の植村・加藤は1.88m望遠鏡で 4月29日にスペクトル観測を行い、高見澤・山本氏の天体が新星に特徴的な膨張を伴う強い水素輝線を示すことを確認しました。 岡山県の藤井貢さん、茨城県の清田誠一郎さんもスペクトル観測に成功されました。

問題はこの新星が CI Aql あるいはその後発見された特異連星に一致するかです。 清田誠一郎さんおよび美星天文台の1m望遠鏡で綾仁さんの撮影されたCCD画像を九州大学の山岡均さんが測定された結果、この新星の位置が上記特異連星に極めてよく一致し、報告されている位置の一致からも CI Aql の再爆発であることが確実になりました。 なんと83年ぶりに確実に再発見されたことになります。 このように複数回の新星爆発を繰り返す天体を反復新星と呼びますが、反復新星は銀河系の中にこれまでわずか7個しか発見されていません。 反復新星のなかには、VSOLJニュース(012)で紹介したU ScoのようなIa型超新星爆発目前の星の有力候補と考えられているものもあり、今回の CI Aql も今後詳しい観測によって正体が明らかにされてゆくものと考えられます。 CI Aql は静穏時16等星と明るい天体で、爆発前の観測もなされていたことから、反復新星やIa型超新星爆発の解明に大きな役割を果たすことになるでしょう。

スペクトル図および観測用星図は、VSNETのページにも置かれていますので、どうぞご利用ください。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/ciaql.html

CI Aql