至近距離を通過する2つの渦巻き銀河

【1999年10月26日 Space Science Update (NASA, STScI)

おおいぬ座にあるこれらの渦巻き銀河は、向かって左がNGC 2207、右がIC 2163と名づけられている。より小さく軽いIC 2163は、NGC 2207からの強烈な潮汐力によってその形が左右にひずめられてしまっている。IC 2163の右向きに伸びる長い腕は、この潮汐力によって引き起こされたものであり、その長さは10万光年にも及ぶ。

NGC 2207&IC 2163

これらの銀河は地球から約1億光年の位置にあり、実直径はNGC 2207が14万光年、IC 2163が10万光年と、私たちと銀河系とたいしてかわらない大きさの渦巻き銀河である。VLA電波望遠鏡による観測とコンピュータシミュレーションの結果、これら2つの銀河の運動のようすが明らかになってきた。IC 2163はNGC 2207の周りを反時計まわりに回転しており、 今から約4千万年前にNGC 2207に最も接近、現在はお互いに離れ合う向きに移動している。 しかしIC 2163は、すでに重力的にはNGC 2207に捉えられてしまっており、今後ふたたび両者は接近を繰り返し、約10億年後には最終的に一つの大きな銀河となってしまうと考えられている。私たちの銀河も含め、多くの銀河はこのような結合の過程を経て、小さな銀河から生長してきたものと考える学者もいる。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測により、NGC2207のダストの腕がIC 2163の中心部をバックに浮かび上がっているようすがはっきり捉えられた。IC 2163の方が後面にあることがこの図からわかる。また、IC 2163も潮汐力を受けた結果、腕が右側に引き伸ばされている。これらのガスやダストは腕構造の中で集積し、近い将来活発な星形成領域となって若く明るい星を生み出すであろう。

<参照>
STScI-PRC99-41 November 4,1999(英文)
ハッブルヘリテージプロジェクトページ(英文)
2207 & IC 2163に関するデータ(英文)