銀河が奏でるメヌエット

【1999年9月2日 Space Science Update (NASA, STScI)

銀河が奏でるメヌエット

この画像はHickson Compact Group 87 (HCG 87)として知られる4つの銀河の一団である。これら、少なくとも3つの銀河はお互いに重力を及ぼし合っており、複雑な運動をしている。この“銀河のダンス”は、数億年の時間をかけてゆっくりと行なわれており、まるで優雅なメヌエットを奏でているかのようだ。

ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている広視野惑星カメラ2の登場により、これまでの地上観測にくらべて格段に高い分解能が達成されるようになった。特にこのイメージでは、一団の中で一番大きな銀河(HCG 87a)を横切る暗黒帯の微細構造がよく捉えられている。87aは、ほんとうは円盤状の銀河であるが、ちょうど私たちから見て真横の方向となるように傾いているのである。

87aとその右横に位置する楕円銀河87bはそれぞれ中心付近に活動銀河核を持っており、その中心には銀河のガスを吸い込むブラックホールが潜んでいると考えられている。3番目のメンバーである上方の渦巻き銀河87cでは、星形成が急速に進行していると思われる。銀河中を流れるガスの流れは、銀河間にはたらく潮汐力によって強められるからである。このように、銀河間の相互作用によって銀河の活動核や星形成領域にフレッシュなガスが供給されているのである。これら3つの銀河はお互いの構造を崩したり、進化のようすを変えてしまうほどに、つよい影響力を及ぼし合いながら存在しているのである。

スペクトル観測によると、一団の中心付近に位置する4つ目の小さな銀河は、この一団の4番目のメンバーであるといえないこともないが、おそらくこの一団とは関係のない、バックグラウンドに位置する別の銀河であると思われる。

この天体は4種類の異なるフィルターによって撮影され、これをもとに3色カラー合成画像が作られた。星形成が活発に行なわれている領域は、高温の星によって青色になっているか、高温の水素ガスによってピンクがかった色になっている。87aを真横によこぎる複雑な黒色の帯は、銀河内のダストが背景の光が遮ることによって生じている。この銀河と右側の楕円銀河との間には、潮汐力によって淡い星のかけ橋がかけられている。

参照:ニュースソース
STScI-PRC99-31, Sept 2, 1999 プレスリリース