[日食情報]今度の皆既日食コロナは全方位型?

【1999年8月7日】

今月11日にヨーロッパからインドにかけて今世紀最後の皆既日食が起こる。各種日食ツアーはこの週末に出発のものが多く、現在は日食出国ラッシュのさなかである。そこで気になるのが、皆既時にどのようなコロナが見られるか? ということだ。コロナの形は、太陽活動の極大期にはコロナが全方向に伸びた形に、極小期には東西方向にのみコロナが伸びる形となるとよく言われる。

それでは、太陽活動が活発になりつつある現在、11日の日食はどのようなコロナが見られるであろうか? 現在ではさまざまな観測機関が常時太陽コロナを監視しており、その画像が準リアルタイムで Web にアップロードされている。これをもとに11日のコロナの姿を占ってみよう。

まず、宇宙空間に浮かぶ太陽観測衛星 SOHO の画像を見てみる。LASCO C2LASCO C3 からは、太陽の外部コロナの広がりがわかる。下の8月7日現在の画像を見ると、太陽面からはさまざまな方向にコロナのストリーマーが伸びているようすがみてとれる。外部コロナのパターンの変化はゆるやかであり、通常1ヶ月程度では大きな変化は起こらない。したがって、11日の日食もこれと同じようないわゆる「全方位型」のコロナが見られるとみてよさそうだ。

8月7日の外部コロナ 8月7日の太陽付近星図
 太陽観測衛星 SOHO の望遠鏡 LASCO C3 がとらえた8月7日現在の外部コロナのようす。全方位に向かってストリーマーが伸びているようすがわかる。右は同じ範囲をステラナビゲータによって示したもの。視野円は15度で LASCO C3 の撮像範囲に対応している。また、この図から太陽の西側に見られる星団がプレセペであると同定できる。

また、太陽面の黒点の位置を捉えた MDI Continuum を見ると、7日現在北半球に大型の黒点が東西に3つ並んでいるようすがわかる。これらの黒点は、太陽の自転により11日には西没直後となると予想される。黒点のある領域は活動が活発であり、日食時にはここからプロミネンスやフレアが噴き出しているようすが見られるかもしれない。日食に行かれる方は第3接触のダイヤモンドリングが見られる直前、太陽の右肩あたりに注目だ。

8月7日の太陽黒点
 同じく8月7日に SOHO の MDI Continuum がとらえた太陽黒点。日食時には東西方向に並ぶ3つの黒点が太陽の西縁にまわりこむ。第3接触時には大規模なプロミネンスの出現を期待したい。

太陽は自転しており、緯度によって異なるが約27.3日で地球に同じ面を向ける。よって、日食の時のコロナのようすは、その27日前である7月15日のイメージが参考になる。LASCO C2 や C3、それに内部のコロナのようすをとらえたハワイのMLSOコロナグラフの7月15日の画像を見ると、上記の黒点に対応した太陽縁北西部から伸びるコロナの輝度が高く、やはりこの位置で太陽活動が活発であることを裏付けている。コロナやプロミネンスの写真を撮影される方はこの7月15日のパターンを考慮して構図を決めるのも手かもしれない。ただし、太陽活動は現在活発になりつつあり、太陽面にて予期せぬ活動が生じるかもしれないことを付け加えておく。

7月15日の外部コロナ 7月15日の内部のコロナ 7月15日の太陽黒点
 8月11日日食のちょうど一周前となる7月15日の各画像。SOHO の LASCO C3、ハワイのMLSOコロナグラフ、MDI Continuumの順。それぞれ、外部コロナ、内部のコロナ、太陽黒点のようすがわかる。11日の日食時も、コロナや黒点はこれらと似たパターンになると予想される。

参考: THE SOLAR AND HELIOSPHERIC OBSERVATORY, The very latest SOHO images, SOHO Summary Database Search Engine
Mauna Loa Solar Observatory, 1999 Mauna Loa Solar Observatory K-coronameter (mk3) Data