天文雑誌 星ナビ 連載中 「新天体発見情報」 中野主一

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2008年1月4日発売「星ナビ」2月号に掲載

はくちょう座新星 2007 = V2467 Cygni

2007年3月16日01時37分、中央局のダン(グリーン)に『HICQ 2007の原稿は昨日18時00分にUPSでここを出発した。しかし、UPSは料金の安い便を薦めたのでそれを使った。そのため、なぜかTracking Numberがわからない。明日、UPSに問い合わせてみる』というメイルを送り、ここでの作業はすべて終了しました。あとは米国での印刷を待つだけです。そして、この日の朝は08時00分にきれいな青空の下、帰宅しました。

その日(3月16日)の夜は22時50分にオフィスに出向いてきました。すると、私がオフィスを離れた約30分後の08時36分に津山の多胡昭彦氏より1通のメイルが届いていました。『何だ……。それじゃもう少しオフィスにおれば良かった』と思って氏のメイルを見ました。メイルのサイズは9メガバイトもあります。さらに氏からは16時34分と18時18分にもメイルが届いていました。そこには「今朝、キヤノン20Daデジタル・カメラ+70-mm f/3.2レンズで、はくちょう座を撮影した3枚の画像いずれにも7.4等級の新星らしき天体が写っていましたので確認を願いたいと思います。新星の出現位置は、赤経20h28m24s、赤緯+41゚49'40"。撮影時刻は、3月16日03時53分、03時54分と04時32分に30秒露光での撮影です。3日前の3月13日04時07分に撮影した画像には、出現位置に12等級より明るい星は見当たりません。03時53分の画像を添付します。縦横線で該当星の位置を示してあります」という報告が書かれてありました。そして、のちに届いたメイルには「出現位置を観測時点での元期(分点)で報告していたようです。2000.0年元期では、20h28m15s、+41゚49'00"となります」という訂正がありました。明るい新星ですので、すぐ、ダンに連絡しました。23時15分のことです。この発見報告は、その確認のために上尾の門田健一氏にも転送しました。

多胡氏より画像が届いていますので、こちらで位置を測定することにしました。しかし、新星を示したという表示線がわからず、どうしても星の同定ができません。そこで、しかたなく、23時40分に『お送りいただいた画像から新星(測定するつもりです)を探しているのですが星の同定ができません。画像の中心位置の赤経と赤緯と画像の写野の広さを教えていただけませんか』というメイルを氏に送りました。また、UPSからTracking Numberとその到着予定日の連絡が届いていました。何と、500円安い便にしたおかげで、普通は2日で届くところが、到着日が1週間後の3月21日になっていました。とにかく、このことをダンに『悪かった。今度は高い料金で送るから……』と連絡しました。23時54分のことです。さて、多胡氏の送ってきた画像をもう一度見てみました。あまりにも大きな画像なのでサイズを小さくしてながめていたのです。100%表示にすると表示線が出てきました。これで新星の位置がわかります。そこで、多胡氏には17日00時45分に『先ほどの件ですが、100%表示すると表示線が出てきました。これでわかりました』というメイルを送っておきました。00時51分には、門田氏より「今、帰宅しました。こちらは曇天です」との連絡があります。今夜の関東での確認は無理なようです。

その夜の01時すぎ、多胡氏の画像から測定した新星の出現位置、赤経が20h28m13s.22、赤緯が+41゚48'45".5を得ました。多胡氏から報告のあった位置と比べて約25"違いますが、なにせ短焦点レンズでの画像です。氏の出現位置は良い精度で測られていました。また、その出現光度は6.8等と見積もりました。もっとも近いUSNO星表に記載された星は、12"ほど離れたところにあり18.5等です。多胡氏の画像には、13.2等まで写っています。氏が使用しているのは70-mm(有効径が22-mm)ですので、その口径を考えると非常に暗い星まで捜索フレームに写っていることになります。きっと、津山は空がすんでいるのでしょう。これらの結果は、01時27分にダンに連絡しました。すると、そのあと01時48分には多胡氏より「ご連絡ありがとうございます。お返事を……と思っていましたら、表示線がわかったとのこと、いつもご迷惑をおかけします。該当位置の撮影は、毎回「20h24m00s、+24゚00'」を中心にねらって撮影していますが、目盛環を見ての撮影のため、毎回若干ずれています。写野は正確に測ったことはありませんが、約13゚×20゚ぐらいの画角だとみています。再確認の撮影を……と待機していますが、今のところ、全天曇りです。美星の綾仁さんにスペクトル確認依頼しました」というメイルが届きます。『そうか。津山が曇りだと美星も同じではないか』と思ったそのとき、美星の浦田 武氏より「何か、確認するものはないか?」という電話があります。こういう連絡は年に何回もありません。しかし、この夜に限って何か胸騒ぎがあったのかもしれません。『美星は晴れているのか。これは幸い……』と、この新星の確認を依頼しました。

美星の晴れ間が津山にもやって来たようです。03時22分、多胡氏から「03時前後にわずかな晴れ間が見え、数コマ撮影しました。やはり7.5等級で写っていました」という報告が届きます。同時に美星の西山・坂本両氏からも、新星の観測とその測定位置が届きます。彼らは新星の光度を6.7等と観測しています。また、1.0-m反射による新星の測定位置は、赤経が20h28m12s.52, +41゚48'36".5で、先のUSNO上の18.5等星(それぞれの末尾が12s.505, 36".69)と新星の出現位置は、ほぼ同じ位置(ずれは、わずかに0".3 ただし、固有運動が入っていない)になります。ということは、この星が新星になったのかもしれません。これらの観測は、03時55分にダンに報告しました。そのあと、ふと『あいつ。混乱するかもしれん』と思い、04時03分に『前のメイルの美星は、美星スペースガードセンターを意味する。Tagoからのメイルによると、彼は美星天文台のAyaniにスペクトル観測を依頼したそうだ。これらは、別組織で、美星は晴れているようだ。従って、Ayaniからの確認観測が届く可能性がある』ことを伝えておきました。

その20分後の04時24分に、多胡氏より今夜の確認画像が送られてきました。画像サイズが、また7メガバイトもあります。そこで、04時53分に氏に『美星が晴れているようですからスペクトルが撮れたかもしれませんね。ところで、後になって申し訳ないのですが、変光星のチェックはされましたでしょうか。それと、お送りいただいている画像は、サイズが3.5K×2.3K(約7〜9メガバイト)と大変大きいものです。私のところのサーバは、特に問題なく受け取れますが、商用のプロバイダーに登録しているご友人に送ると受け取れないことがでてきます。ご使用の画像ソフトで、画像サイズを小さく変更するか、あるいはトリミングすればどうでしょうか。それでも位置の測定はできますので……』というメイルを送っておきました。

とにかくこれで2夜目の確認観測が得られました。ダンは、05時37分到着のCBET 890で、この新星の出現を、新星状天体として早々と公表してくれました。このCBET 890は、06時11分に、参考のため多胡氏と美星に送付しておきました。そして、報道各社に多胡氏の新星発見を知らせる新天体発見情報No.105を送り、07時40分に自宅に戻りました。空は曇っているものの晴れ間も少し見えていました。『美星も津山も同じような空だったのだろうなぁ……』と思いながら空を見上げて帰宅しました。自宅には、犬ちゃんが待っていました。『久しぶりだなぁ〜、お前。多胡さんが新星を見つけたよ。でも、お前はいつも新発見があった朝に出現するねぇ……』と話しながら、買っておいたコロッケ2個をあげました。

その夜(3月17日)は、23時30分に自宅を出て、コンビニで買い物をして23時55分にオフィスに出向いてきました。すると、その日の朝の08時24分に多胡氏より「真夜中から早朝にかけての手配、誠にありがとうございました。衷心より厚くお礼申し上げます。パソコン操作がまだ未熟で、部分カット等の処置でもし失敗したら困ると恐れて、やむなく全画面をそのまま送付しました。再度、今回のようなことに出会うかどうかわかりませんが、それまでには習得しておきたいと思います。ともかく過日のゴースト(2007年12月号2008年1月号参照)のようなことや、ノイズでのご迷惑ではなくてほっとしております。ありがとうございました」というお礼が届いていました。また、10時26分に到着したCBET 891には、綾仁氏と西はりま天文台で観測されたスペクトル確認が掲載されていました。これで多胡氏の新星状天体は、「新星」としての出現が正式に確認されたことになります。

3月18日夜、オフィスに出向くと、その日の朝11時56分に、昨夜(今朝)連絡を取ろうとした山形の板垣公一氏より「昨夜の山形は天気予報に反して晴れました。そこで、山に行きましたが、家に携帯を忘れて……。最近、どうも、モノ忘れが進んでいるのを感じます。中野さんは大丈夫ですか? 夜になったら電話します」というメイルがありました。そこで、20時25分に『いや、私なんか、もっとひどいですよ。座っていて思い出したことを、立ち上がると忘れています。俺は、何をするつもりだったのだろうと……。903iTVを最近よく見かけますが、薄くなって持ちやすいですよね』というメイルを返しておきました。その翌朝のことです。多胡氏が04時半のNHKニュースから、何度も画面に登場します。そこで『今、多胡大先輩がかなり長い時間、NHKに出ているのを拝見しました。まだ、お元気な姿を見て安心しました。私もそのふきんまでは生きたいのですがどうなるか。同じようなデジタル・カメラを使用して、オーストラリアのラブジョイはC/2007 E2を発見していますね。その発見画像が、http://www.pbase.com/terrylovejoy/c2007e2にあります。今後の参考になると思います。ところで、多胡さんのこれまでの発見歴を知りたいのです。もちろん私も調べられますが、独立発見などの抜けがあると怖いので、これまでの発見について、確か、彗星と新星ですよね、リストをいただけると大変ありがたいのですが、お手数をおかけしますがお暇なときにどうぞよろしくお願いします。では、お体にご注意して、またがんばってください』というメイルを送っておきました。

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へびつかい座新星 2007=V2615 Ophiuchi

3月19日の朝、帰宅時に、近ごろ毎晩遅くまで(早朝まで)寝過ごすので、留守番電話の案内に携帯の番号をつけ加えることにしました。しかし、誰も彼もが携帯にかけてくると大変困ります。そこで『天体の発見は、携帯に連絡ください』と注釈を入れました。これで、いつまでも安心して眠れます……。

それから1日後のできごとです。3月20日朝、07時20分に帰宅して、食事をしながらテレビを見ていると携帯が鳴ります。『あれ、こんな朝早くに誰だろう』と思いながら、携帯にでると、掛川の西村栄男氏でした。氏は「少し暗いのですが、新星を見つけました」と話します。『では、オフィスに戻り処理しましょう。FAXかメイルを入れておいてください』と返答すると、氏は「少し時間がかかります」とのことです。『では、10時に戻ることにします』と約束し、自宅でしばらくの間、時間をつぶしました。そして、09時45分にオフィスに出向くと、西村氏のメイルは09時36分に届いていました。そこには「2007年3月20日午前04時29分と04時30分JSTにペンタックス 200-mm f/4.0 レンズ+コダック T-Maxフィルムで、45秒露光でへびつかい座を撮影した2枚の捜索フィルム上に10.2等の新星を発見しました。この星は、発見2日前の3月18日早朝におこなった捜索では、まだ出現していません。極限等級は11.5等級です。また、2005年以降に撮影された多数の捜索フィルム上にもその姿が見られませんでした。DSSと小惑星は調べました」という発見報告が書かれてありました。氏の発見は、10時32分にダンに報告し、10時55分に再び帰宅しました。

その夜(3月20日)は、20時30分にオフィスに出向いてきました。明日21日は、例の学術会議のミーティングに出席のため、東京に出向かねばなりません。そのため、21時07分に関係者に『明日(3月21日)は、日本学術会議の惑星名定義委員会に出席するため、午前05時にここを出ます。帰宅は23時ごろです。その準備のため、00時〜04時30分までオフィスを留守にします。04時半に戻ってきて、その間に届いたメイルを処理します。新星の確認観測を行っていただけたならそれまでにお送りください。なお、携帯を持っていきますので、この間に何かあったら携帯にご連絡ください』というメイルを送っておきました。その際、4日前に新星を発見した津山の多胡昭彦氏にもこのメイルを転送しておきました。天体の発見は続くことが多いからです。00時35分に上尾の門田健一氏より「お忙しいところご苦労さまです。今、帰宅しました。現在、上尾は雲が多く晴れ間がわずかですが、お戻りになるまで待機しています」という連絡がありました。そして、00時45分にいったん帰宅しました。空は良く晴れていました。

出張の準備を整え、04時25分にオフィスに戻ってくると、01時25分に、ダンから「お前はUPSの“Expedited”serviceを選んだ。この配送は“Express”serviceより遅く、到着に1週間ほどかかるのだそうだ。ところで、料金はいくらだったのだ。郵便よりもだいぶ高いのか」というメイルが届いていました。そして、01時47分には、門田氏より「PNは高度約10゚まで昇ってきましたが、全天がぶ厚い雲に覆われています」というメイルが届いていました。『うぅ〜ん。出発前に処理しておきたかったが、無理か……』と思って、その後の04時23分に再び届いていた門田氏のメイルを見ました。そこには「晴れ間が見られ、03時09分に観測できました。出現位置に星が存在します。1時間の経過で移動は確認できませんでした。光度は9.8等です。USNO星表では、出現位置の6"以内に星はありません」というメイルと測定位置が書かれてありました。

『やった!』と思って、ダンへの報告を書き始めた04時35分には、栃木の観測所で捜索している板垣氏からもメイルが届きます。氏も、04時20分にこの新星を確認してくれました。氏による光度は9.7等と門田氏のそれとよく一致していました。両氏の出現位置は、赤経が17h42m44s.00、赤緯が−23゚40'35".1と西村氏の測定位置と約1'以内で一致していました。もちろん、04時53分にこれらの確認をダンに報告しました。そこには『UPSからは“Expedited”serviceと“Express”serviceの違いについては、まったく説明がなかった。これまでは、私は2,600円を払ってきたが、今回は2,100円だった。もし、同じ重さのものを航空便で送るとわずかに500円だ』。そして『今から東京に出かけるために約半日間留守になる。帰りは深夜だ』ということもつけ加えておきました。これで、心配だった新星の処理も東京出発前に終了し、04時59分に関係者に『門田さん、板垣さん。ありがとう。これから出ます。以後は携帯に……』というメイルを送り、05時15分に神戸空港に向け、オフィスを離れました。東京から戻ってきたのはその夜、22時45分のことです。ダンは、その日3月21日朝、10時16分到着のCBET 900で西村氏の新星を公表していました。そして、またも三重の中村祐二氏が独立に発見していました。さらに西はりま天文台でスペクトル観測されていることも掲載されていました。これで安心しました。

ところが……です。18時41分に多胡氏より「今朝(21日)に撮影の3枚の画像にご連絡のあった新星状天体(PN)が写っていましたので、データのみ送ります」という独立発見が届いていました。そこには「発見時刻は21日03時52分JST。光度が10.2等。19日04時30分頃に撮影した2枚の捜索画像には11.3等より明るい星は写っていません。西村さん、桜井さんたちのご活躍には頭が下がります。中野さんからのメイルが入っていなければ、確認依頼をするところでした。デジカメによる彗星の画像ありがとうございました。今後の参考にしたいと思います」という発見報告がありました。また、21時44分には、西村氏より「今朝、板垣さんより連絡があり、新星が公表されたことを聞きました。今回も、中野さんには大変お世話になり、第一発見者となることができました。スペクトル確認も行われ、何とお礼を申し上げていいのかわかりません。お忙しい中、ご処理いただき、本当にありがとうございました。新星は、昨日より少し明るくなっています。4月より少し時間ができますので、彗星を捜してみようと計画しております。今後も、またよろしくご指導のほどお願い申し上げます」というお礼が届いていました。

多胡氏には、23時02分に『報告をありがとうございます。悪いことしましたね。発見が続いているので、心配になって東京出張をお知らせしてしまいました』というお詫びのメイルを送り、23時25分、ダンにこの多胡氏による独立発見を知らせました。そこには、公表前に西村氏の新星発見を多胡氏に告げた事情を説明しておきました。明け方になって、西村氏には『おめでとうございました。今、新天体発見情報をファックスでお送りしましたが、うまく受け取れたでしょうか。なお、No.が間違っています。正しくは、No.106です。他は、同じですので再送はいたしません。ところでこれまでに発見した天体は、どれくらいになるのでしょう。発見情報にその数を書きたいのですが、記憶がうやむやなので控えております。こちらでも、調べられますが、独立発見などが抜けてしまうと怖いので、一度、発見リストをお送りいただけませんか。確か、彗星(C/1994 N1)と新星(複数)ですよね……。多胡さんと同じく、超新星を発見すれば“発見三冠達成”といつも思っているのですが。お暇なときにどうぞよろしく。では、また、がんばってください』という返信を送りました。04時30分には、ダンよりHICQ 2008の原稿が到着したというメイルが届きます。それをダンに確かめ、今夜の業務は終了し、これで帰宅することにしました。05時40分のことです。

それから約1日半が経過した3月23日16時06分、多胡氏より「へびつかい座新星の発見情報をありがとうございました。参考までに発見画像を送ります。ただし、申し訳ありませんが、画像トリミングの習得が間にあいませんので、またも撮影の全画面を送付します。位置は縦横線で表示しています」というメイルとともに発見画像が送られてきました。ダンは、3月27日00時39分発行のIAUC 8824で多胡氏の発見を正式な独立発見として取り上げてくれました。多胡氏には、この回報を同日02時17分に送っておきました。そこに『良かったですね』とつけ加えておきました。氏からは、その日の18時20分に「メイルをありがたく拝見いたしました。いろいろとお手数をわずらわせ申し訳ありません。衷心よりお礼申し上げます。今後、またも確認依頼するようなことがあるのかどうかわかりませんが、画像をトリミングして送信できるようになりました」という連絡が届いていました。多胡さん、これも(トリミングできるようになったことも)良かったですね……。

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