メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第42回 デジタル映像との連携

星ナビ2008年7月号に掲載)

光学式であるメガスターとデジタル映像との連携についてご紹介します。

JAXAシンポジウムで成果を披露

先日、あるシンポジウムでひとつの発表を行った。グランキューブ大阪で3月21日に開催されたJAXA産学官連携シンポジウム「くらしの中の宇宙ブランド」の中で、3年間にわたって進めてきたJAXAオープンラボの共同研究の成果である。

メガスターは光学式プラネタリウムだが、共同研究で挑んできたのはデジタル化。単にデジタルプラネタリウム機能を付け加えるだけならすでに先行例がある。我々が開発したのは、以前もここで紹介したように、まったく異質であるデジタルと光学式という両者を自動的に連動させるオートジオメトリ技術と、オンラインネットワークサーバに蓄えた天体データをインタラクティブに取り出すFITSサーバというふたつの成果だった。FITSとは、天文学の研究で使われる天体画像や観測データのフォーマットで、これにプラネタリウム専用の拡張を行ったフォーマットを策定したのだ。これによって例えば、昨日得られたばかりの観測データを、生解説の中ですぐに取り出して映し出す、といったことが可能になる。

画期的な成果が出たこの研究も、当初はなかなか進められずに苦労したものだ。一番の悩みだったのは、ドームでの上映を基本とするプラネタリウムの研究なのに、肝心のドームで実験できる環境がなかったこと。だから開発のほとんどを机上のシミュレーションで進め、イベント上映会場で実地に活かせる所だけ実用しながら開発を進める、といったやり方を取るしかなく、完成度を上げるには限界があった。

そんな状況を救ってくれたのが埼玉県坂戸市にある坂戸児童センターだった。以前ここで報告したが、過去幾度かの特別上映をきっかけに、ここのドームを研究用に利用させていただくことになった。これで開発スピードは大幅に増した。坂戸は、大平技研のある生田(神奈川県川崎市)から地理的に遠いというハンディがあったが、ドーム利用の自由度の高さ、何より館職員の協力姿勢に心を打たれた。ちょうど圏央道の八王子〜あきる野間が開通して、車での移動時間が大幅に短縮したことも幸いした。坂戸で実験を始めてからまだ半年もたっていないが、すでにメガスターとデジタル映像が完全自動で連動できる試験に成功し、めざましい成果が上がっている。そうした成果が大阪のシンポジウムで花開いたのだ。

デジタル化は、メガスターで比較的手つかずの教育的応用の道を切り拓く。美しい星空に感動するだけでなく、宇宙の神秘をわかりやすく理解してもらえるような、新しいメガスターが生まれていくことだろう。

オートジオメトリ技術による調整イメージ

オートジオメトリ技術による調整イメージ。