Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2019年8月号掲載
アポロ計画の裏側と表側

先号に続き今回も人類月面着陸50年にちなんだ書籍から、「アポロ計画」に関係するものを紹介しよう。

まずは、『3つのアポロ』 から。この本を手に取った多くの人は、「タイトルの“3つ”とは何のことだろう?」と思うはずだ。ズバリ、それがこの本の伝えたいテーマである。アポロ計画といえば誰もが思い浮かべるのが、英雄的な“宇宙飛行士”だろう。しかし、この計画を遂行したのは彼らだけでなく、ロケットを製造したりプログラムを組んだり飛行を管制したりした“技術者”がいる。さらに、未踏の地である月を調査する“科学者”もいる。この3役がアポロ計画を支えて実現に導いたのだ。もちろんこの3役には、それぞれに無数の人々が含まれている。その中でもキーとなる人物や出来事について、丁寧にわかりやすく伝えている。ときおり差し込まれる、ユニークな逸話の「隠れ咄」も、月面を案内する「アポロの歩き方」も、著者と恩師たちの「追憶」も、著者の息女による章扉絵も、緊張感あふれるアポロのドキュメントに一呼吸与えてくれて読みやすくしている。

次の2冊は、保存版ともいえる大型のビジュアルブック。『月へ』 は『Missions to the Moon』の日本語版で、アポロ1号から17号までの軌跡や写真など、本邦初公開を含む貴重な一次史料と図版を200点以上載せている。この本の最大の特徴は、動画や3D模型などによって当時を“追体験”できること。スマートフォンやタブレット端末で専用の無料アプリをダウンロードしてからアイコンをスキャンすると、AR(拡張現実)体験ができるというインタラクティブ・ブックなのだ。NASAアーカイブの臨場感あふれる映像にワクワクしたり、ニョキッと飛び出すロケットや月着陸船イーグルに思わず手を伸ばしたくなる。

『アポロ11号』 は2009年に「月面着陸40周年」を記念して発行され、2014年に新装版が刊行された、アポロ計画の記録集。大判の美しい写真がふんだんに載っているが、ときおりピントの甘い画像や、何が写っているのかわかりにくいものがある。なんとそれらは、アームストロング宇宙飛行士やオルドリン宇宙飛行士が、多くの任務の合間に慌ただしく撮影したもので、これまで“失敗作”として公開されなかった写真だという。そんな“貴重な失敗作”から、彼らの多忙ぶりと緊張感がひしひしと伝わってくる。

『月とアポロとマーガレット』 は、冒頭の『3つのアポロ』でも紹介されている女性プログラマー、マーガレット・ハミルトンの伝記絵本。彼女がアポロ計画で「どれほど大切な役割を果たしたか」を教えるだけでなく、一人の女の子が純粋に「自分の興味を広げ、学び、そして重要な仕事をした」感動が素直に伝わってくる。当時は、女性がプロジェクトのリーダーになることは今より大変な時代だったはず。そのなかで、「なりたいものになれる女の子」になった彼女の偉業にあらためて敬服し、多くの少年少女に読んでほしいと願う。翻訳は、月面着陸の衛星中継を同時通訳した鳥飼玖美子さん。彼女もまた、歴史的なシーンに関わる貴重な体験をした女性の一人だ。

最後は、コミック『月とライカと吸血姫(ノスフェラトゥ)』 。アポロ計画と直接の関係はないが、舞台が1950〜60年代の冷戦期の宇宙開発競争をモデルにしている。原作は牧野圭祐氏の同名小説(小学館「ガガガ文庫」刊)。2018年版「このライトノベルがすごい!」で文庫部門第4位になった話題作を、漫画家の掃除朋具氏がどうコミカライズしたか一読あれ。

(紹介:原智子)

「アポロ11号月面着陸50周年」にちなみ、出版界でも関連の書籍が刊行されている。何冊か集まったので、今月号からしばらく紹介していこう。まずは、アポロの活動を振り返る書籍から。