Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2018年3月号掲載
科学・文化・歴史…様々な角度から迫る月

この記事を書いている2018年1月は、2日未明が今年最大に見える満月(いわゆる「スーパームーン」)だった。そして31日に皆既月食(いわゆる「ブラッドムーン」あるいは「ブラッディムーン」)が起こり、ひと月に満月が2回ある(いわゆる「ブルームーン」)。現在の暦にあてはめるとブルームーンは2〜3年間隔で起こり、欧米では「めったにない珍しい出来事」という意味の言葉でもあるらしい。しかし、今年は3月にもブルームーンが起こる。「なんだ、けっこう起こるじゃないか」と言いたくなるが、1年で2回ブルームーンになるのは1999年以来で、次は2037年だ。これらは、月と地球の規則的な動きを暦にあてはめれば必然なのだが、「今年はとても珍しい年だ(何か大きなことが起こるに違いない)」と言い立てる人がいるかもしれない。そもそも、単なる衛星である月を「○○ムーン」と呼び分けたり、「○○名月」とあがめたりするのは、いつの時代のどこの地域の人にとっても、月がとても身近な存在で生活の一部だったからだろう。今回は、そんな月をテーマにした本を集めてみた。

『月を知る!』 は、小学校中学年を対象にした「調べる学習百科」シリーズの一冊。月の動きを中心に学ぶ「月の科学」、月の詳しい姿に迫る「月面の世界」、月と人間のかかわりに触れる「月と文化」、探査の歴史と基地計画を紹介する「月への挑戦」という4つの側面からアプローチしていく。「月の科学」では大きな図解を使ってわかりやすく解説し、「月面の世界」では観音開き4ページ分の紙面に大きくて詳細な月面図(表・裏)を載せている。「月と文化」では日本や世界の宗教・芸術など暮らしに息づく月を多角的に取り上げている。いずれの項目にも、美しい月面写真やさまざまな歴史的文献など多くのビジュアルが載っていて、小学生だけでなく大人も興味をそそられる。親子で一緒に、月について調べたくなる本。

『月学』 も大判の児童書で、こちらはすべての漢字にふりがながふられている。「月の位相(月の満ち欠け)の秘密」パートでは朔望について、「知ってスッキリ!月の大疑問」パートでは月の出・月の入り時刻や上弦の月・下弦の月の見分け方など間違えそうな事項について教えてくれる。「月と日本人の心象風景」パートでは、短歌・俳句・随筆など古典文学に登場する月を鑑賞する。コラムでは、補足情報や関連するおもしろい話題を紹介している。

一方、手に取りやすい文庫本サイズの『夜ふかしするほど面白い「月の話」』 は、月にまつわるさまざまな疑問に答える雑学本。「月はなぜ『お盆』のように見えるのか」「月がなかったら地球はどうなっていたか」など学術的な情報から、「月面ローバー『ハクト』とはなにか」など最新の話題まで、50以上の質問にわかりやすく答えている。著者は月や惑星探査を中心にした普及啓発活動をライフワークとし、ウェブサイト「月探査情報ステーション」を長年にわたり主宰している。語りかけるような文章からは優しい人柄と、天文普及への情熱が伝わってくる。

さて、ここからはこの季節にぴったりの本を紹介しよう。『ICELAND オーロラのある風景』 は、アイスランドの美しいオーロラ写真と旅情報を伝えるガイドブック。著者はたびたびアイスランドに渡り、さまざまなオーロラを撮影してきた。その成果をまとめた同書は、多彩なオーロラが載った写真集であると同時に、撮影に臨む人にとっての参考書でもある。海岸やフィヨルド、氷河や熱水(間欠泉)などといっしょに撮影されたオーロラ作品は、アイスランドならではの風情がある。今回手にしたのは、2017年10月に発行された改訂第3版。11月に最終版が出て、今年2月には『ICELAND Aurora Guide(日本語・韓国・中国語版)』 も予定されている。

最後は、小説『夜明けのカノープス』 。星ナビ読者ならご存知の「南極老人星」ともよばれる、りゅうこつ座α星をモチーフにしたストーリーだ。劣等感と挫折感を味わいながら生活する主人公。彼女がひょんなことからカノープスを知り、ラストに少しだけ前向きな言葉を口にする。個人的には、プラネタリウムのボランティアスタッフが、天文に詳しくない人の立場を大切にしているくだりに同感した。2013年に刊行された単行本の文庫化で、天文ファンとしては文末の「解説(渡部潤一)」も読みどころ。

(紹介:原智子)