Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2016年4月号掲載
宇宙の歩みと、探る人の歩み

アインシュタインが100年前に予測した重力波が、ついに検出された。人類ははるか昔から、自分では直接見ることのできない宇宙の形状や地球の変遷について、さまざまな考えを巡らせてきた。そして長い時代を経て、少しずつ謎を明らかにしたり、新たな謎に気づいたりしてきたのだ。今回は、そんな“人類による宇宙への知的進化”を感じながら、宇宙や地球の歴史に関する本を紹介しよう。

『人は宇宙をどのように考えてきたか』 は、ずばりタイトルが書籍の内容を示している。例えば、言語記録のない時代にフランスやスペインの洞窟に絵を描きつけたホモ・サピエンスが太陽や月の満ち欠けに関心を寄せたことや、生活のための暦づくりを目的とした巨石建築物。そして、哲学(人生と世界の根本原理)や宗教(宇宙や自然など超絶的なものに帰依する精神)に至っては、「人と宇宙の関係」そのものであろう。やがて「人」は、エジプトやメソポタミヤなどの神話的宇宙論から、ニュートンの時代を経て、現代宇宙論の基礎であるアインシュタインの宇宙モデルに到達する。ここからは、まさに“ビッグバン”的に宇宙物理学が進化している。並行して、長らく「自分の目」しか観測道具を持たなかった「人」は、ガリレオが望遠鏡を宇宙に向けてから「巨大な機械的な目」を手に入れ、つい先日にはH-IIAロケットでX線天文衛星「ひとみ」を宇宙に送ることにも成功した。また、スーパーカミオカンデによってニュートリノの質量の存在を示すニュートリノ振動を発見するなど、素粒子の研究も理論と実験の両輪で激しく進んでいる。この本は、単に過去の天文科学史を紹介するだけでなく、未来の人がどう宇宙を科学していくかを意識しながら書かれたに違いない。だから、素朴でおおらかな神話を花咲かせた時代も、現代と遜色ない数学知識を発展させた古代ギリシア時代も、人にとって宇宙への関心が時代の先端だったことが伝わってくる。よくある「天文が何の役に立つか」という質問には、この本を読み終えた今、私は「人が宇宙に関心を寄せ、真理に迫りたいと思うことは、とても自然なことで、それが人である」と答えるだろう。

次の2冊も、タイトルがその内容を端的に示している。『宇宙はどのように誕生・進化したのか』 『地球46億年 生命の起源7つの新事実』 は、大判の誌面にカラフルな図や写真を用いて、それぞれの疑問(宇宙の誕生と進化、地球の生命の起源)について紹介している。前書は関連人物の顔写真が豊富で、どんな人が研究したのかイメージしやすく、多くの科学者が携わってきたことを実感できる。

宇宙、とくに太陽系を研究するとき、宇宙空間の物体が地球に飛び込んでくる隕石は、とても多くの手がかりを与えてくれる。そんな研究の最前線を紹介するのが、『隕石でわかる宇宙惑星科学』 。2012年に退職するまで宇宙地球科学の専門家で、国際隕石学会のフェローでもある著者によると、隕石などの具体的な試料を使って行う惑星科学研究では、研究者独自のオリジナリティーある発想が面白い研究の進展につながるという。そう語る著者のオリジナリティーは、同書の表紙にもよく現れている。ユニークなイラストや手描き図解のすべてが、退職後に東京藝術大学美術学部芸術学科へ進学した著者自身によって描かれたものなのだ。宇宙惑星科学の面白さと、自然科学研究の面白さと、著者の面白さが伝わる読み物。

最後は、天文・文学・絵画・舞台など歴史上でさまざまなジャンルに影響を及ぼした『ギリシア神話』 を手軽に学ぶマンガ。星座物語の登場人物を知ることはもちろん、教養としてもおさらいしておこう。

(紹介:原智子)