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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

The Milky Way Inside Out
SPECIAL COLLECTOR'S EDITION 2009

表紙写真

  • Astronomy Magazine 刊
  • 2009年9月
  • ISBN TO4-1052729-181-0
  • 価格 1,901円
  • ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。

本書は、天の川銀河に関する最新ニュースを特集したアメリカのムックである。同様の我が国のムックと同じく、思わず壁紙として貼っておきたくなるような美しい説明図が、ページをめくるごとに眼前に展開される。美術品といってもよいほどだ。主な内容は、80億年前からの天の川銀河で起こった恒星・星間ガス・星間塵のレシピ、今後太陽近傍の恒星系で予想される出来事、地球型系外惑星の探査などなど、15の項目にわたる。

この手の記事は、我が国の科学雑誌でもしばしばお目にかかるが、本書は米国の一流天文学者が全力投球で書き上げた普及書であることが、記事の端々から読み取ることができる。まさしく最新の内容で、正直にこの点は今後の研究に…というようなことも書かれている。

どの記事も、みなさんにお勧めしたいが、評者が感動に近い気持ちになったのが、銀河カニバリズム(銀河食人論)について、真正面から取り上げた後半三編の記事である。すなわち、天の川銀河と大小マゼラン雲やアンドロメダ座大銀河とのこれまでの絡み合い、(2)天の川銀河と球状星団の振る舞い)、(3)アンドロメダ座大銀河との合体のこと。つい2年前、評者は米天文誌「Sky & Telescope」で、およそ30億年後に天の川銀河がアンドロメダ座大銀河に合体させられるという記事を読み、衝撃を受け、プラネタリウム解説も度々披露させてもらい、みなさんの世界観を大変革させたのだが、本書で50年も前に二人の天文学者(F.カーンとL.ウォルティエ)がそれを唱えていたということを知った。スペクトルの青方偏移から、銀河に接近中ではあるが、横方向への運動がわかっていないから今後どうなるかはよくわからないといわれていた時代にそのような意見を表明したとは、勇気ある学者達だと感心した。

本書記事によれば、55億年後に完全合体し、それはMilkomeda Galaxyと呼ばれることになるという。どうぞ、みなさんも、本書を読んで思想を大変革させていただきたい。

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