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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星とくらす

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星とくらす
 

  • 田中美穂 著、木下綾乃 イラスト
  • WAVE出版
  • 20×15cm、160ページ
  • ISBN 978-4866210421
  • 価格 1728円

丸の内のM書店でここ50年来毎月買っている米天文月刊誌S&Tを、本書刊行年月日に購入した際、和書コーナーでふと目にしたのがこの本である。出会って良かった! 評者のように、カルチャーセンターで受講生にお話しする際、皆さんが何を疑問に想っているか掴むために本当に役立つからである。特に第一章の「星の人。宇宙の人」にあるが如く、天文家には二種あることを教わった。山本一清・冨田弘一郎・野尻抱影諸先生に始まる星の人、本書には記載がないが宮本正太郎・鈴木敬信・萩原雄祐諸先生が走った宇宙の人。いずれも日本では第一走者だった。平たく言えば、天文アマチュアに星を楽しむポイントを教えてくれた前者。後者は稀代の天文学者である。昔は前者が勢いで圧倒していたが、近年は後者が凌駕しているというのが現状だ。半世紀前には都会でも天の川がなんとか見えるほど夜空が暗かった(東京では1972年を以てそれが消えた)ので、天体観望が何とか楽しめたが、今では美しい星空が消滅し、その反対に宇宙という哲学的存在が伸してきたのが第一原因だと評者は考えている。

本書は、日本で最初に民間運営の天文台が開台した由緒ある倉敷市に古書店を構え、ご自身良好な環境下で天文に関心を持ち続けておられる著者が、星の人の立場から綴った美しく味わい深い随筆集。バイブルとしていただけたらと思っている。

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