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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

はるかな宇宙 身近な宇宙

表紙写真

  • 野本陽代 編著
  • 求竜堂
  • A5判、216ページ
  • ISBN4-7630-0604-5
  • 価格 1,260円

資生堂の「サクセスフルエイジング講座」で行われた同名の講座シリーズを書籍に編集。サイエンスライターの野本陽代氏が聞き手の対談集で、ゲストは的川泰宣(JAXA執行役)、三神泉(三菱電機・すばる望遠鏡を開発)、大鍋寿一(ピッツバーグ大学客員教授)、加藤万里子(慶應義塾大学教授)、海部宣男(国立天文台台長・当時)の各氏。

活躍目覚しいご主人を天文学者にもつ、ご自身も天文学の訳書・啓蒙書・普及書で多作な著者が、5人の著名天文学者・関係者たちと行った対談集。対談相手の「生きがいとしての宇宙観」を見事に聞き出し展開させる技能は、お見事としか言いようがない。聞き手の謙虚な人柄がそうさせているのだろう。

JAXA執行官 的川氏、すばる望遠鏡を作った三菱電気の技術者 三神氏、宇宙技術を福祉部門にと行動される新潟医療福祉大学教授 大鍋氏、理論構成物理学者で慶応大学教授 加藤氏、電波天文学者で前国立天文台長 海部氏と聞けば、本書を読まねば現代宇宙科学を語れないといえるほどの顔ぶれだ。本書は、聞き手の聞き出し方が上手なため、関連著作では語られないことばかりが書かれている。特に評者にとって、三神氏と大鍋氏の話が斬新で、すばる望遠鏡建設の裏話やコックピット座席が車椅子や福祉用ベッド開発に役立っている話など、思わず「おおっ!」と叫んだほど。

さらに、微小重力下で日常生活するための衣服を研究する日本女子大学の多屋氏、宇宙飛行士 山崎氏、映画評論家 細越氏の寄稿文も短いが示唆に富むものばかり。でも、評者にとっての本書からの最大プレゼントは、大哲学者プラトンの詩である。ぜひお読みいただきたい。

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