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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

地球の変動はどこまで解明できるか

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地球の変動はどこまで解明できるか
 

  • 宮原ひろ子 著
  • 化学同人 刊
  • 13.4 x 18.3cm、206ページ
  • 2014年8月
  • ISBN 978-4-7598-1661-7

この本は一言で言えば百点満点!題名の通り、太陽活動と近年何かと異常と騒がれる地球の気象についての本。本書を精読すればむしろ、人間が異常と決めつけることこそ異常だと思えるほどだ。だってそうでしょう?本書によると、今から2万4000年前の最終氷期に今は群島のパラオ諸島は100mに達する海面低下で大きな島がオンリーワン。だが6000年前の縄文期には温暖化で気温がピークに達し、現代よりはるかに高温となった。以後低温化して海水準も下がり、18世紀の小氷期には北半球全体平均で今より0.7℃気温が下がり、氷河末端は高度差で数百m前進した。このため欧州では数十万〜数百万単位で死者発生(当時の世界人口からは驚くべき数字)、耕作地・居住地減少、穀物収穫量の大幅減少、栄養失調による感染症が増加した。こっちの方が異常でしょう?

バイオリンのストラディバリウスが名器ともてはやされるのは、育った時期の寒さで年輪が細くて密な樹木を使用しているからだとか、ワインに代わるブランデーやシャンパン生産量の急増理由も、中国王朝の盛衰も気候変動にともなう食糧難・牧草収穫難での遊牧民の移動が原因とか、本書には興味ある話題が満載なのだ。もちろん本書の主題は太陽活動と宇宙線である。その今後を概観するには、最新の研究をふまえた本書精読が一番である。

著者は若手の研究者で武蔵野美大講師。だが専門は宇宙線物理学・太陽物理学等ですよ。