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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

北極圏のサイエンス オーロラ、地球温暖化の謎にせまる

表紙写真

  • 赤祖父俊一 著
  • 誠文堂新光社
  • 四六判、208ページ
  • ISBN4-416-20635-6
  • 価格 1,890円

今年喜寿を迎えられる著者は、アラスカ大学で49年間もオーロラなど北極圏を調べ続けておられる世界的研究者。前書きにも記述されているように、一家に一冊、誰にでも読み楽しんでもらえるように書かれた本。北緯55度以北の準北極圏を含めるとアフリカ大陸の広さに匹敵するという広大な地域は、著者が本書のあちこちで語られているようにワンダーランドだ。ために、誤解や想像が多い。例えば、極寒の地で日中30℃以上にならない、野菜はできない、野球・ゴルフ・マラソン大会もやれない、など全て×。一方、2億年前には恐竜がかっ歩していた、メタセコイアの森林化石もあった、蘭の花が咲く、蚊の大群に襲われる、蝶やトンボもいる、リスは9ヶ月も冬眠する、氷河後退は必ずしも炭酸ガス増加による地球温暖化のためではない(特に1章が設けられ詳細に論じられている)、など全て○。真冬に雪だるまが作れない(固まらないから)、シャボン玉はできた瞬間氷の玉になる、などオーロラ観光一辺倒でなくぜひ経験してみたい。プラネタリウムで評者はよく極点での日周運動による沈まぬ太陽を演出するが、その時、星も一緒に出しておくことは×。そんなことを思いながら、評者は本書を一気に読んでしまった。もちろん、ライフワークとしてのオーロラの紹介はわかりやすい文体で、さすがである。ダイヤモンド・ダスト、アークティック・ヘイズ(大気汚染によるもや)、オゾンホール、など全地球的な問題の紹介と解説も類書を圧倒する。すばらしい啓蒙書として購読をおすすめしたい。

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