ガスが増えると切り替わる、銀河中心ブラックホールのX線放射

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【2014年9月19日 理化学研究所

天文衛星「すざく」によるX線観測から、活動銀河核のブラックホールに流れこむガスがある一定の量を超えると、放射されるX線の成分や量、変動の仕方が劇的に変化することがわかった。ガスの重力エネルギーを放射に変換する機構が、ガスの量次第で異なる動作モードに切り替わることが示されている。


NGC 3227の活動銀河核

NGC 3227中心部の活動銀河核(AGN)と、推測される巨大ブラックホール周辺の構造。クリックで拡大(提供:発表資料より。写真:Ken Crawford)

活動銀河核のX線強度相関図

活動銀河核のX線強度相関図。ある強度を境にして、X線のスペクトル構成が劇的に変化することがわかる。クリックで拡大(提供:発表資料より)

理化学研究所と東京大学などの共同研究グループは、しし座の方向約7700万光年彼方にある銀河NGC 3227の中心にある巨大ブラックホールを、天文衛星「すざく」のX線観測データから調べた。

この銀河中心ブラックホールには大量のガスが吸い込まれ、その重力エネルギーが変換され強い放射となって明るく輝いている。こうした「活動銀河核」(AGN)のブラックホールをやや離れて取り巻くガスの円盤からは可視光線が、ブラックホールに近い領域の高温電子からはX線が放射されると考えられている。

銀河からのX線放射量および個々のX線光子が持つエネルギーの変化に着目して解析を行ったところ、ブラックホールへのガスの流入量が少ない時には、放射量が小さくエネルギーが高めのX線で構成される成分がゆるやかに変動することが明らかになった。一方、流入量がある境界を超えると、エネルギーが低めの別のX線成分が現れ、放射量の増大とともに激しく変動しはじめることもわかった。

ガスの重力エネルギーを放射に変える「AGNエンジン」の中に異なる働きを担う2つの部分が存在し、吸い込まれるガスの量が少ない時にはそのうちの片側だけ、ガスの量が増えてくると両方が働き出すという、AGNの新しい機能や構造が示された。