大規模天体衝突の証拠、チェリャビンスク隕石からヒスイ輝石を発見

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【2014年5月28日 東北大学

2013年2月にロシア・チェリャビンスク州に落下した隕石から、天体衝突に伴う超高圧・高温条件の下で生成されたヒスイ輝石が世界で初めて発見された。地球衝突前に大規模な天体衝突があった証拠とみられ、チェリャビンスク隕石の軌道進化を推測できるかもしれない。


チェリャビンスク隕石の電子顕微鏡写真

チェリャビンスク隕石の電子顕微鏡写真。クリックで拡大(提供:東北大学プレスリリースより、以下同)

ヒスイ輝石周辺の拡大画像

ヒスイ輝石周囲の拡大画像。溶融した斜長石からヒスイ輝石(Jd)が結晶化しており、ヒスイ輝石の周りの部分は、急冷固化した非晶質(ガラス)が見られる(Gl)。クリックで拡大

東北大学の小澤信さんらの研究グループは、ロシア科学アカデミーやノボシビルスク州立大学との共同研究によって、2013年2月にロシア・チェリャビンスク州に落下した隕石から、天体衝突に伴う超高圧・高温条件の下で生成したヒスイ輝石(NaAlSi2O6)を世界で初めて発見した。

小澤さんらは、チェリャビンスク隕石の衝撃溶融脈(天体衝突によって隕石の一部が脈状に溶融した部分)の内部を電子顕微鏡で詳しく調べた。その結果、斜長石からヒスイ輝石が生成している様子が見つかったのである。

斜長石は地球や隕石を構成する主な鉱物の一つであり、惑星内部や天体衝突のような超高圧・高温条件において、ナトリウムに富む斜長石(NaAlSi3O8)がヒスイ輝石(NaAlSi2O6)とシリカ(SiO2)相に分解する。そして、溶融した斜長石を冷却するとヒスイ輝石が結晶化する。

チェリャビンスク隕石は、内部に至るまで溶融した部分を多く含むことから、地球に落下する前に大規模な天体衝突を経験したと推測されていた。これまで、その明確な証拠は示されていなかったが、ヒスイ輝石の発見は天体衝突があったことを支持するものである。

チェリャビンスク隕石のように地球の近傍を通る軌道を持つ天体は地球近傍天体と呼ばれている。これらの天体は、もともと火星と木星の間にある小惑星帯に存在していたものが、何らかの作用により地球に接近する軌道を持つようになったものと考えられており、その要因の一つとして他天体との衝突が上げられている。

地球近傍天体は将来地球に衝突する可能性があるため、起源や軌道の進化を調べることは、将来起こりうる天体衝突の予測に重要だ。チェリャビンスク隕石については地球衝突の際の軌跡がよく記録されており、軌道計算が精確になされることが期待される。今回推定された衝突イベントを組み込んだ数値計算を行うことによって、チェリャビンスク隕石がどのような軌道進化を辿ったのか、推測できる可能性があるという。

〈参照〉

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