60億光年彼方まで、誤差1%の精度で距離を測定

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【2014年1月9日 カブリIPMU

観測プロジェクト「バリオン音響振動分光サーベイ」で、60億光年彼方の銀河までの距離を誤差1%の高精度で測定することに成功した。宇宙の膨張を加速させると考えられている謎のダークエネルギーの正体解明につながると期待される。


バリオン音響振動の波紋

バリオン音響振動の波紋。宇宙誕生まもないころの密度のゆらぎ(左端:緑と赤の濃淡)が、数十億年後の銀河密度分布として表れる(右端)。クリックで拡大(イラスト提供:Chris Blake and Sam Moorfield)

米メキシコ州で行われている観測プロジェクト「バリオン音響振動分光サーベイ」(BOSS)で、60億光年彼方にある銀河までの距離を誤差1%の高精度で測定することに成功した。

これほどの高い精度で距離が測定できた天体は、従来は天の川銀河の中にある太陽から数千光年以内の星々だけだった。今回の測定は、「バリオン音響振動」と呼ばれる、宇宙に存在する銀河の分布に周期的に現れる波紋を測定するという新しい手法で実施された。

近傍(現代)から遠方(昔)までおよそ120万個の銀河の位置を測定し、その密度分布から波紋の大きさ(みかけの角度)を観測すると、銀河までの正確な距離がわかる。宇宙の歴史における各時代ごとの波紋の大きさを調べることにより、宇宙膨脹が時間と共にどのように変化してきたか、なぜ膨張が加速し始めたのか、手がかりを得ることができるという。

今回測定された銀河地図を利用した別の研究成果を、カブリIPMU特任研究員の斎藤俊さんらが発表している。正体不明のエネルギー(ダークエネルギー)によると考えられている宇宙の加速膨張を、アインシュタインの重力理論の修正によって説明しようとする試みがあるが、この理論を検証したものだ。

斎藤さんらは、1億光年という大きなスケールで重力的に銀河がどう集まっているのかを観測し、赤方偏移歪みと呼ばれる効果を精密に測定して重力理論を検証した。今回の観測では、アインシュタインの重力理論に修正が必要な積極的な証拠は見つからなかった。

赤方偏移歪みによる重力理論の検証は、宇宙加速膨張の謎に迫るうえで、バリオン音響振動による距離測定とは相補的な役割を果たすという。

現在のところBOSSプロジェクトの測定結果は、ダークエネルギーの働きは宇宙誕生以来変化していないことを示唆している。現在の宇宙の姿や大規模構造を説明する宇宙モデルは、さらに裏付けを得て強固になっている。

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