幻の「ニオブ92」、超新星爆発が起源との新仮説

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【2013年11月28日 国立天文台 理論研究部

日本原子力研究開発機構などの共同研究により、太陽系初期にのみ存在した放射性同位体「ニオブ92」は超新星爆発のニュートリノ核反応で生成されたことが理論的に解明された。


ニュートリノ核反応によるニオブ92生成

超新星爆発の初期段階に、重力崩壊によって中心部に原始中性子星が形成される。原始中性子星から放出されたニュートリノが外層のジルコニウム92やニオブ93と核反応を起こし、ニオブ92を生成する。クリックで拡大(提供:早川岳人/日本原子力研究開発機構。以下同)

ニオブ92の量の時間変化

ニオブ92の量の時間変化。クリックで拡大

半減期約3500万年の放射性同位体ニオブ92は、現在の太陽系には存在しないが、約46億年前に太陽系が誕生した時点では存在したことが隕石の研究から明らかになっている(注1)。

ニオブ92が宇宙のどこでどのように生成されたかは不明だったが、早川岳人さん(日本原子力研究開発機構)らの研究グループでは、太陽系近傍で起こった超新星爆発が起源ではと考えた。超新星爆発で放たれたニュートリノによって爆発の外層でニオブ92が生成され(注2)、そのまま吹き飛ばされて太陽系に降り注ぎ、隕石に取り込まれた、というシナリオだ。

この仮説をもとにニュートリノと原子核が反応する確率を調べ、超新星爆発で生成されるニオブ92の量を計算した。太陽系誕生時の量は隕石の研究からわかるので、超新星爆発から太陽系誕生までの間にベータ崩壊でどれだけ減少したかもわかる。そうして、超新星爆発から太陽系誕生までの経過時間を100万〜3000万年と見積もることができた。

この研究では太陽系ができた当時のニオブ92の量が初めて再現され、誕生前の太陽系のそばで起こった超新星爆発によりニオブ92が生成されたことを支持する傍証となっている。今後、隕石研究が進んでより正確なニオブ92の量がわかれば、さらに正確な経過時間がわかる。

注1:「隕石でわかるニオブ92」 ニオブ92が変化(ベータ崩壊)したジルコニウム92が多く含まれる隕石がある

注2:「ニオブ92の生成」 ニュートリノがニオブ93の中性子を押しだし、ニオブ92が作られる

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