系外惑星探査衛星「ケプラー」、姿勢制御の不具合で観測不能に

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【2013年5月17日 NASAPhys.org

数多くの系外惑星を発見してきたNASAの探査衛星「ケプラー」が、姿勢制御用リアクションホイールの故障のため観測ミッションを中断している。


ケプラーの機体構造

ケプラーの機体構造。左下がリアクションホイール。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

ケプラーのリアクションホイール

ケプラーに搭載されているリアクションホイール。異なる方向に取り付けられたホイールの回転により、3軸方向(縦・横・高さ)の姿勢を変更・安定させる(提供:NASA)

NASAは、系外惑星探査衛星「ケプラー」のリアクションホイールが故障し、ミッションを続行できない状態にあると発表した。

ケプラーは地球の後ろについて太陽を公転しながら、こと座とはくちょう座の境界付近の領域を観測する。リアクションホイールは衛星の向きを調整するための機構で、5月14日に4基のうち2基目の不具合が発覚し、観測ミッションに必須である3基の駆動が不可能となってしまった。原因は内部構造、おそらく軸受の不具合と発表されている。

現在ケプラーはスラスタ噴射によって大まかな姿勢制御を行うモードに入っており、通信途絶やシステムダウンなどのおそれは当面ない模様だ。まずは新規にプログラムされた燃料消費を抑えるモードに移行し、リアクションホイールの復旧、あるいはホイールとスラスタを併用した姿勢制御によるミッション続行の可能性を探っていく。以前NASAでミッションに関わったScott Hubbardさん(米スタンフォード大学)によれば、太陽光圧の利用も考えられるという。

2009年に打ち上げられたケプラーは主要ミッション期間を過ぎ、延長期間に入っている。これまでに132個の系外惑星と2500個以上の候補を発見しており、取得済みのデータからも今後多くの成果が得られるだろう。

とはいえ、もうひとがんばりを望む声もある。ケプラーは恒星の手前を惑星が通過する際の減光からその存在を検知する(トランジット法)。惑星候補と認定されるためには3回以上の減光の観測が必要で、公転周期が長い、つまり中心の恒星からほどよく離れた地球サイズの惑星が見つかるようになったのはここ1年ほどのことだ。

カーネギー研究所の系外惑星研究者Alan Bossさんは「私の人生でも最大級の悲しい日です。別の目的で利用できる可能性もありますが、本来の観測ができないんですから」とコメントしている。

なおNASAは2017年に、地球に近い惑星を全天から探索する「TESS」を打ち上げる予定である。