銀河中心ブラックホールの自転速度を正確に計測

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【2013年3月1日 CfANASAESA

2つのX線天文衛星を駆使した観測で、銀河の中心にある巨大質量ブラックホールの高速自転が正確に計測された。


ブラックホールの重力とガス雲、それぞれのX線への影響モデル

銀河中心からのX線は、ブラックホールの重力効果(上)を反映したものであることがわかった。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

多くの銀河の中心には、太陽の数百万〜数十億倍というとても重いブラックホールがあると考えられている。ブラックホールはその強い重力で恒星やガスをのみこんだり、合体したりして成長し、周囲には引き寄せられた物質の円盤が形成されている。

こうしたブラックホールの自転速度は、ブラックホール自体と母銀河全体について知る手がかりになる。回転が遅ければ、いろいろな方向からランダムに小さな塊を引き寄せてきたということだし、回転が速ければ、物質の流入が均一で安定していたか、あるいは銀河同士の合体の際に中心ブラックホールも合体した過去があったと推測できる。

自転速度を知るには、円盤から放射されるX線に含まれる鉄の輝線のゆがみを見る。自転が速いほど重力の影響で空間が曲げられ、円盤の内縁がブラックホールにより近づけ、ゆがみは大きくなるのだ。

だがやっかいなことに、このゆがみは重力だけでなく周囲のガス雲でX線がさえぎられることで起こる可能性もある。この2つの要因を区別することが課題だった。

Guido Risalitiさん(ハーバード・スミソニアン天体物理センター)らが観測したのは、ろ座方向にある銀河「NGC 1365」だ。その中心にある太陽200万個分の大質量ブラックホールも高速自転しているとみられていたが、上述の理由で確実とは言えなかった。

そこで、それぞれ違うエネルギーのX線を観測する2つの天文衛星「XMMニュートン」と「ニュースター」で同時に観測したところ、X線はガス雲にさえぎられておらず、鉄輝線のゆがみはそのままブラックホールの重力効果を反映したものということがはっきりした。こうして、NGC 1365の中心ブラックホールは実際に高速自転していることがわかった。

Risalitiさんは、すでに同じ方法を他の銀河中心ブラックホールにも応用して観測研究を行っている。重力の時空への影響を見るこうした研究は、一般相対性理論の検証にもつながるということだ。