ケック望遠鏡がとらえた天王星の素顔

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【2012年11月12日 ケック天文台

米ハワイのケック天文台の観測と画像処理から、これまででもっとも詳細にとらえられた天王星の姿が浮かびあがった。


天王星

様々な画像処理の後に得られた天王星の姿。通常は自転や帯状風などによる変化でとらえにくい微弱な特徴が現れた。クリックで拡大(提供:W.M.Keck Observatory)

この画像は、7月25日と26日にケックII望遠鏡の近赤外線装置で撮影した天王星の姿だ。メタンガスによる吸収の強さの違いを反映するような2種類のフィルターを使うことで、雲の高度がわかるようになっている。

画像に見えるような模様は非常にかすかなものだ。しかし長時間露出すると、自転や帯状風により模様がつぶれてしまう。そこで、短時間露出で撮像した多数の画像から自転と風の影響を取り除き、それを平均処理して画像を完成させた。25日の画像が117枚、26日の画像が118枚使われている。

画像の中の白い部分は、地球でいえば積雲のような、光学的に分厚い高高度の雲だ()。青緑色の部分は同じく高高度にある光学的に薄い雲で、地球の巻雲のようなものだ。ほんのり赤い部分は、深い雲の層にあたる。

個々の模様として見えるのは比較的浅い部分のもので、天王星の雲の最上層、1〜2気圧程度の部分にある。両画像の左側に見える細く明るい部分は、天王星の環によるものだ。

画像の右下が天王星の北極側で、北緯55度以上の領域に小さな対流斑がいくつか見られる。2003年にほぼ同じ波長で南極側を観測したときには見られなかったもので、探査機「カッシーニ」が土星の極域でとらえたものとよく似ている。

赤道付近から北緯10度まで広がる明るい帯域の南縁に見える波状帯の模様は今回初めてとらえられたもので、大気の流動の境界で起こるかく乱のようにも見える。左画像の下部には、明るい雲を伴った暗い点が見られる。

注:「光学的な透過率」 光学的に厚い、薄いというのは光の通過率のことで、光学的に厚いほど光が通りにくいことを示す。