過去最大の3D宇宙マップをリリース

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【2012年8月15日 SDSS-III

これまでで最も詳細な宇宙の姿を表現した3D宇宙マップが作成された。謎の重力源「暗黒物質」や宇宙の膨張を加速させる「暗黒エネルギー」などの理解に大きく役立つことが期待されている。


SDSS-IIIによる宇宙マップ

SDSS-IIIデータによって描かれた宇宙の姿。クリックで拡大。リンク先では動画も見られる(提供:Aragon/SubbaRao/Szalay/Yao, JHU/Adler/LBNL/SDSS-III Collaboration)

今回「スローン・デジタル・スカイ・サーベイIII」(SDSS-III)から発表されたのは、これまでで最大の、大質量銀河や遠方ブラックホールの3Dマップだ。昨年初めに公開された史上最大のサーベイ画像に新しいデータを合わせて3Dマップの作成が開始されており、今回のリリースデータは、6年にわたるプロジェクトの最初の3分の1をカバーする「データリリース9」(DR9)と呼ばれるものだ。

このDR9には「バリオン振動分光サーベイ」(BOSS)で取得した、現在から60億年過去の宇宙までに存在する大質量銀河150万個と120億年過去までのクエーサー(銀河中心のブラックホールが激しい放射を行う、非常に明るい天体)16万個の位置データも含まれている。これらのデータをカギとして、過去60億年の宇宙の歴史をひも解き、「暗黒物質」(重力を生み出すが電磁波で観測できない謎の物質)や「暗黒エネルギー」(宇宙の膨張を加速させる未知のエネルギー)が宇宙のどのくらいの割合を占めるのか、さらに詳細に調べられようとしている。

DR9の中核をなすマップには、現在の半分の年齢(数十億歳)だったころの宇宙に存在する54万個もの銀河のスペクトルも新たに含まれている。スペクトルは天体の距離を特定する手がかりとなり、これをもとに宇宙の立体構造がさらに詳細に明らかになる。クエーサーもまた、宇宙の物質分布を測定するための手がかりとなり、そのスペクトルから宇宙空間における銀河間ガスや暗黒エネルギーの存在がわかる。

さらにDR9のデータからは、遠方銀河だけではなく天の川銀河の恒星の化学組成もわかるので、天の川銀河の歴史も知ることができると期待される。

SDSS-IIIでは2014年までに今回の3倍の量のデータ(天文学者だけでなく世界中誰でもアクセス可能)を公開する予定である。

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