いて座に今年5個目の新星 小嶋さんが発見

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【2012年7月24日 VSOLJニュース(290)】

7月16日(世界時)、群馬の小嶋正さんがいて座の方向に新星を発見した。いて座の新星は今年5個目となる。


VSOLJニュースより(290)

著者:前原裕之さん(京都大学花山天文台)

いて座の新星

黄色いマークの箇所がいて座の新星。クリックで広域表示(撮影:遊佐徹さん)

7月7日にいて座に明るい新星が発見されたばかりですが、もう1つの新星がまた、いて座の方向に発見されました。いて座の中に発見された新星はこれで今年5個目になります。

新星を発見したのは群馬県嬬恋村の小嶋正(こじまただし)さんです。小嶋さんは7月16.512日(世界時)に、焦点距離150mmのレンズをつけたデジタルカメラで撮影した画像から、12.6等の新天体を発見しました。この天体は小嶋さんが6月22日と6月27日に撮影した画像には13.5等以下で写っていませんでした。

またこの天体は、小嶋さんによる翌17.598日の観測では12.2等、宮城県の遊佐徹さんの確認観測(17.993日)ではV等級で12.7等と報告されました。遊佐さんの観測によると、この天体の位置は以下のとおりです。

  赤経  18時19分36.94秒
  赤緯 -19度07分40.2 秒(2000.0年分点)
  いて座の新星の周辺星図

遊佐さんや筆者の行った多色測光では、波長の短いバンドほど暗く、この天体が赤い色をしていることがわかりました。

7月18日、岡山理科大学チーム(今村和義さん、小木美奈子さん)と岡山県の藤井貢さんがこの天体の分光観測を行いました。この天体のスペクトルには水素のバルマー系列や、1階電離した鉄、中性のヘリウムの輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判明しました。また、ナトリウムD線などの吸収線が見られることや、連続光成分が短波長側ほど弱く赤い色をしていることから、この新星は我々との間にある星間物質による吸収や散乱の影響を強く受けていると考えられます。Hα輝線の幅は秒速1000km程度で、新星爆発による物質の膨張速度がそれほど大きくない部類の新星と思われます。

7月18.88日に分光観測を行ったイタリア・パドヴァ天文台のグループ(Munariさん他)や、19日に観測を行ったオーストラリアのBohlsenさんも同様の結果を報告しました。

これまでに報告されている測光観測の結果によると、17.99〜18.88日の間にはこの新星はV等級で12.7等から12.2等へゆっくりと明るくなる傾向がみられ、今後の明るさの変化が注目されます。


いて座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後まず「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

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