初期宇宙の暗黒銀河を初めて検出

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【2012年7月13日 ESO

銀河形成に重要な役割を果たすと考えられている初期宇宙の暗黒銀河の存在が、初めて観測で確認された。


クエーサーHE 0109-3518と暗黒銀河

クエーサーHE 0109-3518(赤い丸)と暗黒銀河(青い丸)。クリックで拡大(提供:ESO, Digitized Sky Survey 2 and S. Cantalupo)

暗黒銀河

12個の暗黒銀河。星がほとんどなく、普通は見ることができないが、近くにあるクエーサーの光で照らされている。クリックで拡大(提供:ESO, Digitized Sky Survey 2 and S. Cantalupo)

暗黒銀河とは初期宇宙に存在した銀河の一種で、小さく、豊富なガスを含んでいるもののそれほど活発に星を作らなかったとされる。銀河形成の理論からその存在が予想された暗黒銀河は、現在見られるような星に満ちた明るい銀河のもとになったと考えられている。

しかし、暗黒銀河を見つけるのは非常に難しい。星をほぼ含んでいないため、光をほとんど出さないからだ。長い間、暗黒銀河の存在を検証するための新技術の研究が続けられてきた。たとえば、ある天体の光のスペクトルにわずかな吸収が見られれば、その手前に暗黒銀河があるという証拠になる。今回の新しい研究で、初めて暗黒銀河を直接観るための道が開かれた。

「私たちが考えた暗黒銀河の探し方は簡単です。暗黒銀河を照らしてみるのです。近傍にある明るいクエーサーからの紫外線によって、暗黒銀河のガスは光ります。その光を探したのです。紫外線ランプがあるクラブなどの場所で白い服がより明るく見えるのと似た原理です」(スイス・チューリッヒ工科大学のSimon Lillyさん)。

研究チームは暗黒銀河の非常に微弱な蛍光を検出するために、広い視野と高い集光力を持つ超大型望遠鏡(VLT)を利用して長い露出をかけた観測を行った。暗黒銀河内の水素ガスは強烈な放射光を浴びると紫外線を発する。その光をとらえるために、VLT搭載のFORS2装置を使って、明るいクエーサー「HE 0109-3518」の周囲を調べた。宇宙の膨張による効果で紫外線の波長は伸び、紫色の可視光になって地球に届く。

研究チームは、クエーサーから数百万光年以内の場所に100個程度のガス天体を見つけた。そこからクエーサーによる蛍光ではなく銀河内部の星形成によると思われるものを取り除き、最終的に12個の天体に絞りこんだ。今まで行われた暗黒銀河の検出の中でもっとも信頼度の高い方法だ。

さらに、暗黒銀河の物理量も一部調べることができた。ガスの量は太陽約10億個分で、初期宇宙に見られるガスが豊富な小型の銀河としては平均的なものだ。また、同時期の典型的な星形成銀河に比べると、星形成率が100分の1以下だという。

「VLTを使った我々の観測で、小さい島のような暗黒銀河の存在が証明されました。この研究から、まだ謎に包まれている銀河形成の初期過程と銀河がガスを獲得するメカニズムを理解するための大きな一歩を踏み出すことができたのです」(Sebastianoさん)。

2013年にVLTに搭載される予定の次世代面分光装置MUSEによって、さらに詳しい観測が行われることが期待されている。