へびつかい座に新星が出現

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【2012年5月29日 VSOLJニュース(286)】

オーストラリアのジョン・シーチさんが19日(世界時)、へびつかい座方向に10.5等級の新星を発見した。新星爆発によって膨張するガスの速度が比較的速い部類に入る古典新星と考えられる。


VSOLJニュースより(286)

著者:前原裕之さん(京都大学花山天文台)

へびつかい座の新星

へびつかい座の新星(画像中央の赤いマークの箇所)。クリックで広域表示(撮影:清田誠一郎さん)

私たちの銀河系の中心方向に近いへびつかい座にはこれまで多数の新星が発見されています。今年の3月に西村栄男さんが新星を発見したばかりですが、今度はオーストラリアのJohn Seachさんが別の新星を発見しました。へびつかい座の中に出現した新星としては今年2個目です。

Seachさんは、5月19.484日(世界時、以下同様)に50mm f/1.0のレンズをつけたデジタルカメラで撮影した画像から、10.5等級の新天体を発見しました。前日の18.488日に茨城県の清田誠一郎さん、18.614日に福岡県の高尾明さんがそれぞれ撮影した画像では、この天体は13〜14等よりも暗く、写っていませんでした。1日ほどの間に増光してきたと考えられます。E. Guidoさんらの確認観測によると、この天体の位置は以下のとおりです。

  赤経  17時39分57.00秒
  赤緯 -24度47分07.3 秒(2000.0年分点)
  へびつかい座の新星の周辺星図

岡山理科大学の今村和義さんなど多数の観測者による分光観測(光の分析)から、スペクトルに水素のバルマー系列の輝線のほか、一階電離した鉄や中性酸素などの輝線が見られ、この天体が古典新星であることが判明しました。Hα輝線の速度幅はおよそ秒速3,000kmと報告されており、新星爆発によって膨張するガスの速度が比較的速い部類に入ると考えられます。発見後は急速に暗くなっており、発見直後は10等台でしたが、22日には11.6〜11.7等、26日には12.9等ほどまで減光していました。今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。


へびつかい座の新星の位置

この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後まず「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。

また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。

〈参照〉

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